奥から懐かしいスケッチブックが出てきた。
いいや、記憶は残っている。朧気ではあるものの、確かにあった。
◇
◇
オーキド博士に連絡をしてから、すでに五日が経過した。トラブルもなく、寄り道もなく進めば思ったよりも早く、クチバシティには到着した。一週間に一本定期船があるようで、次の出航予定は二日後。まだチケットが届いていない為、下手をすればさらに一週間伸びる可能性がある。
「(まぁ、急ぎの旅じゃないから構わないけれど)」
旅立って一か月も経っていないのに、随分と薄汚れ、擦り切れた衣服。ほとんど同じような見た目のものと交換した。
沢山の離島が集まって出来ているオレンジ諸島はカントー地方よりも暖かいという情報を入手し、現地で温度調整ができるよう上着を二着購入した。彼方の気候を肌で感じてから買っても良いのだが、何せ離島。買い物がどのくらいの頻度でできるのか不安な為、できる限りの準備は済ませておく。
ポケモンセンターに常設されているバトルフィールドの傍で炎李を出すと、ほんの少しだけ人目を引いた。炎李も少し居心地が悪そうに翼を動かしたが、僕がやりたいことを察したのかすぐに地面に付す。
「痛くない?」
『問題ない』
それにしても大きくなったなぁ。普通のヒトカゲよりも大柄な子だと思っていたが、進化してもそのままだとは思わなかった。きちんと測っていないが、きっと普通のリザードンよりも大きいだろう。
全身を丹念にブラッシングする。風音や疾風のような体毛は無い為、目に見えるような成果はあげられないだろうが、スキンシップだと思えば十分だ。
大きくなった体にまだ慣れていないのか、度々申し込まれるバトルに勝利するも、その動きに以前のような力強さ等は感じられない。炎李自身も感じているだろうそれを乗り越えるためにやるしかない。
「チケットもまだまだかかりそうだ。いくらでも付き合うよ」
そろそろ日課になりつつある炎李の飛行訓練。ポケモンセンター内だとバトルを申し込まれる率が高く、まともに練習できないことを察したのでさっさと郊外に行ったほうが早い。
バトルが好きなだけあって炎李は鍛錬や模擬戦。小さな訓練もとても楽しそうに行う。真剣ではある。真剣に行っているものの、なんとなく纏う空気間のようなものが柔らかくなるのだ。
まだ届かない。届かないと首を長くして待っていれば、ようやく待ちわびた手紙が届いたとジョーイさんから連絡があった。オーキド博士が気を利かせたのか、一切の連絡を取っていない母からの手紙が入っていた。
最後の方にはサトシが書いたのであろうへたっぴな字があった。まだまだ覚えきれていなかったはずだから、母の手本通りに書いたはずだ。
船の中で度々ポケモンバトルが繰り広げられている。
時折勝負を受け、すると記念にと交換を持ち掛けられた。
別れる気はないのだと断り、なんとなく次からバトルをしたくなくなった。
炎李も察したのか、攻めてくれればいいのに何も言わずに受け入れる。
疾風に悪いことをしたな。堂々と外を駆けられればいいのに。
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