信頼関係がなければ、命を預けたりできない。
では、次は誠実さと人なりを確かめよう。
高潔な人間のみがオレンジリーグに挑戦し続ける権利を得られる。
そんな戯言。正直、嫌いではないんだ。
ピンカン島を出、いくつかの島を経由した。ネーブル島に辿り着いたのは、ピンカン島の出来事から五日が経過した。予想よりも一週間近く時間の短縮が出来、氷河のルート選びには驚かされる。空の移動ということもあって通常よりも早いとは思うのだが、それでも、だ。
「風音、炎李、沙月、疾風、氷河、か……」
『どうかされたんですか?』
「最低でも後一人は仲間を加えないと、オレンジリーグに挑戦するのは難しいなって」
ジムの内容は人それぞれだが、オレンジリーグ本線でなすべきことはヘッドリーダーとの六対六の総力戦(フルバトル)。言い方は悪いが沙月は戦力外なので、舐めプをしないことを考えると後二人は戦力として欲しい所だ。
「(ノーマル、炎、毒、炎、水・氷。……うーん、炎が多いな)」
空を飛ぶ、足が速いという点で差別化はできているし、大丈夫、大丈夫だ。ポケモンを選ぶだなんておこがましい気もするが、ある程度意識して交流するのはいいかもしれない。……あわよくばの思考で行けばいいだろう。
「お疲れ様、氷河」
『そーかよ』
「うん、ありがと。ボールの中だけど少し休んでいて」
氷河をボールの中に戻し、改めてネーブル島を見る。島の中央にある高い山。ジムがあるというのに、島に活発さのようなものはない。どちらかといえば、無人の島のようなそんな印象を受ける。
「とりあえず散策しよう。ネーブルジムに挑戦するのだって少し休んでからでもいいしね」
『はい』
風音からの同意を得、島の探索を始めた。
「やあ、君もネーブルジムに挑戦するのかい?」
振り向くと、爽やかな青年とムスッとした少年が一人。ネーブルジムに挑戦するのは事実である為、頷く。
「はい。……えっと、貴方方は……?」
「僕はダン。彼は……」
「イズチ。ふんっ、お前もネーブルジムに挑戦するのか」
値踏みするような視線。頭から爪先までじっとりと見られ、一度素通りされた風音に視線が戻る。
「その服装、そのポケモン。お前、例の犯罪者だろ」
「イズチくん、その言い方は……」
「お前も庇うのか? じゃあお前も……!」
噂に踊らされた子か。目付きが鋭くなる風音を腕の中に入れ、飛び掛からないようにする。こういう相手は何を言っても無駄。
「犯罪者犯罪者って、君、それしか言えないの?」
「君も煽るようなことは……!」
「本当に犯罪者であれば、ポケモン協会の方からそれ相応の結果が出ている。それでも僕に対してとやかく言いたいなら、不確定な噂じゃなくてちゃんとした裏付けをとってから始めたらどう? 君がどんな理由でオレンジリーグに挑戦しているのかは知らないけど、有名なトレーナーになるのなら、自分の発言に責任を持ったほうがいい」
ジリジリと睨みあっていると、パンッと手をたたく音が聞こえた。
「そこまで。彼女の言っていることも最もだ。イズチくん、謝罪は……」
「ふんっ」
「欲しいと思ってないので結構です。……では、僕はこれで」
「君はネーブルジムに向かわないのかい?」
……やけに引き留めてくるな。僕に対してとやかく思っているような感じはするが、行動を制限されるのは嫌だな。親切心というよりかは、何か裏があるように感じる。
「島に着いたばかりなので、ポケモンたちに休憩をしてもらうかと思っているので。すぐに挑む気はないです」
「それでも、ジムの場所は知っておいたほうがいいだろう? 僕らは今からジムに向かうんだ。一緒にどうだい」
「結構です。では」
あんなギスギスした空気だったのに、場を読まずによくあんな発言ができたものだ。
『デリカシーの無い人ですね!』
「強引な人だったね。風音、島の探索は一旦中断しようか」
『どうしてですか?』
「今動いたら、さっきの人たちと鉢合わせしそうで怖いんだよなぁ」
『それは私も嫌です! お休みですね、お休みしましょう!』
顔を合わせればきっと何かしらのトラブルに発展する。さっきはダンというストッパーっぽい人もいたから何とかなった節はあったが、それがなければどうなっていたのかわからない。
「ジムがある島だから人が沢山いるかと思ったけど、そうじゃなさそうだし……。いい所を見つけて、皆で休憩しちゃお」
『はーい』
休憩が嬉しいのか、風音の足取りは軽くなった。海が近くて、日影が沢山ある場所。そんな贅沢な場所が存在するだろうか。
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