傭兵

057
 新しい顔。ジッと見定める。
 これから選ぶのは、自分の時間を預ける相手。
 自分だけでは辿り着けない高みへと向かうための手段。
 初対面時の印象は大事。  ダメそう。どれも皆、弱そう。
 今日もハズレか……。拙者の命を預ける者はどこにいるのだろう……。


▼ △ ▼ △ ▼

 シラナミバッジを入手した後、一番近い島へと足を運ぶ。
 特産品のザボンが有名なザボン七島。そのポケモンセンターの中に入る。
「ようこそ、ポケモンセンターへ」
「次のジムが判明するまでの宿泊と、ポケモンたちの治療をお願いします」
 いつも通り手続きを済ませ、次のジムの案内を待つ。案内された部屋の中に手紙があり、中を見ると次のジムの案内が書かれていた。
「ユズ島、か……。意外と遠い。とりあえず外にも出られないから、今のうちに調べられるだけ調べておこう」
 疾風も慣れてきたようで、僕がいなくても大人しくしていてくれる。風音たちの回復を待ちながらも、ガイドブックの情報をできる限り集めた。
「こんばんわ、お預かりしたポケモンは皆元気になりましたよ」
「ありがとうございます。……どうしてジョーイさんが態々……?」
 いつもなら助手のラッキーが運んでくるのにと、不思議がっているとニッコリとジョーイさんが笑った。
「津波くん、貴方に一つ提案があるの。お部屋に入っても大丈夫かしら?」
「えっと、ジョーイさんのお仕事に支障が無いのなら……」
 部屋の中に招き入れ、預けていた風音たちを返してもらう。渦潮を泳ぎぬいた氷河には若干疲れのようなものが出ており、隠してはいるが二日程は休んでおいたほうがいいとアドバイスされた。
「津波くん、オレンジリーグで使うポケモン。一枠空いているわよね?」
「はい。沙月……ニドラン♀のことを考えると、あと二人居てほしいとは考えていますが」
「それなら丁度いいわ。ユズ島に向かう前に、ここに向かって頂戴。紹介状はこれね」
「えっと……?」
 はいどーぞと、押し付けられた手紙。混乱しつつも受け取り、詳細を聞く。
「マーコット島に向かってね。行けばわかるわ」
「えっと、その、もう少し説明を……」
「あらもうこんな時間。長いし過ぎたわね」
 質問は許さないという強い圧力を感じた。まぁ、行けばわかるのであればその通りにしよう。僕が質問することを諦めたことを察したジョーイさんは誤魔化すように高らかに笑い部屋から出て行った。

▼ △ ▼ △ ▼

 十日ほど時間をかけてザボン七島のジョーイさんに勧められた島、マーコット島に到着した。炎李メインでの移動を頼んでいた為、休憩中に氷河が不満そうに鳴いていたがガン無視した。君はドクターストップがかかっているので二日間お休みです。
 マーコット島のジョーイさんもザボン七島のジョーイさんと雰囲気が似ており、紹介状を渡すととある部屋に案内された。案内された部屋の中には何人かのトレーナーが。絡まれたら絡まれたかと、部屋の隅っこに座る。
『なんだったんでしょうねー?』
「何処かに向かうのかなって思うけど……」
 周りの人たちは少しピリピリしているのか、詳細を聞きづらい雰囲気だ。体感五分にも満たない。素晴らしい笑顔を浮かべたジョーイさんが次の場所へと案内すると言う。素直についていくと、先頭だった子たちが感嘆の声をあげた。
「彼らに選ばれた場合のみ、捕獲を許可します。尚、彼らとの制約で、期限は一年。もしくはオレンジリーグ優勝までとなっています」
 自分たちの有能性をアピールするかのように、散り散りになっていく。ようやく高い壁が消え、状況を正しく見ることができる。ジョーイさんに案内されたのはポケモンセンターの裏側。普通なら立ち入ることのないエリアだ。
 そんな場所にいたのは、ストライク。近づいている人間をやや警戒した様子で見ていた。
「彼らはどうしてここに……?」
「彼らの中での流行のようなものね。数年前にある一匹のストライクが人の元で修行して帰ってきたの。その個体はオレンジリーグに挑戦した子だった。それで、野生のストライクたちの間で人と一緒に修行することが流行っているって訳。ここは彼らとのトラブルが起こらないように斡旋する場所」
「トラブル、ですか……?」
「彼らは比較的人に友好的だけど、大体一年くらいでトレーナーのもとを去るの。それを知らないトレーナーが彼らを捕獲すると、大変なことがあってね。今は紹介状でやってきた子たちにのみ面会をして、選んでもらっているというわけよ」
 野生のポケモンがこうも集まって人を選ぶというのも珍しい。人の元にいた個体を受け入れないと聞くが、もしかしたらマーコット島のストライクにとっては人の元にいたというのは些細な事で、強さこそ正義なのかもしれない。
「認めてもらう為にはどうしたらいいんですか?」
「彼らは強くなるためにここにいる。自分なら彼らを強く育て上げられるという才能を見せてあげなさい」
 トレーナーの中には自分が鍛え上げた自慢のポケモンを見せたり、ストライクとバトルをして自分が育てたポケモンの力を見せ、強さによって屈服させようというものもいた。
「君ならどうする?」
「……そうですね、とりあえず休息をとろうかと」
「?」
「島に着いたばかりで、バトルはしたくないんですよね」
 我ながら頓珍漢な答えをしたな。ジョーイさんは目を丸くした後、声を堪える様に控えめに笑った。

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