されば天地怒り、世界は破滅に向かう
海の神、破滅を救わんとあらわれん
されど世界の破滅を防ぐことならず
優れたる操り人あらわれ、神々の怒り鎮めん
色々なトラブルはあったけれど、最終的に予定された時間以内に本島の方にたどり着くことはできた。祭壇の近くに降りてもらい、どうしたものかと突っ立っていると何処からかヤドキングがやってきた。
『宝=x
「しゃべ……!?」
神様ならともかく、ヤドキングまで……。この祭礼は本当に、本来なら凄い大事なものなんだな。
案内された台に三つの宝を置く。後は巫女の登場を待てばいいのだと、ヤドキングが教えてくれた。僕の役目はここまでだと、お疲れ様という労いの言葉も頂いた。
「ふあぁ……」
『眠たいのか?=x
「夜通しだったから。起きてないとダメだよね」
『操り人の役目は終わった 寝ても問題は……=x
儀式の一部だろうか。突如、海が荒れ始める。儀式用としてある出島を囲むように渦潮が発生し、突如として身の丈の数倍もある波が立つ。
「は」
逃げることもできないまま僕はその波に飲み込まれた。
全身がずぶ濡れになる。ぶるりと身を震わせ、最低限水けを払う。辺りを見渡し状況を確認し、そばにいたはずのマスターがいなくなっていることに気付いた。
『マスター!』
溺れた? 危険が迫っているのなら、氷河さんが出てきて運んでくれるはずだ。信頼関係はある。一向に現れない影。最悪の想定が脳裏を過る。
『海の神……!=x
『海……?』
嫌な予想で頭が一杯だった。私の頭上を飛ぶ巨大な影の主。見上げると、相手も私を見下していた。
『マスターを返しなさい! 返さないのであれば……!』
『何をする気だい? まさか、わたしたちを脅すのかい?=x
余裕そうな声が返ってくる。貴方達から見たらちっぽけな命でしょう。でも、私にとっては代えがたい代用のできないかけがえのない人だ。
『貴方から、マスターを取り戻します』
『しばらく預けてもらおうか=x
『わたしには 彼女を見極める必要がある=x
『ふざけたことを! マスターは人ですよ!? 海の中で呼吸が長時間続くはずがない! 死んでしまいます!』
手の届かない所に逝ってしまう。それだけはイヤだ。
『死なないさ=x
『何を言って……!?』
穏やかに、穏やかに、あの人は私に選択しろと告げた。
『命をかけてあがくのであれば死なない=x
『わたしと戦う気かい? やめておいたほうがいい=x
『きみの大事な人の命はわたしが握っているのだから=x
『……っ!』
最初から、私が選ぶ道は一つだというのに。怯んだ私を見、声が降ってくる。
『大人しくそこで待っているといい なに、少し話をするだけさ=x
『そんなこと、信じられる訳……』
『信じるも、信じないも、きみの自由さ でも、君の選択で可能性が消えるね=x
『』
『生きて帰ってくるかもしれないという 可能性が消えてしまうね=x
どぼんと、海の神と呼ばれたものが沈んでいく。波が穏やかに揺れ、まるで今まで起きたことが全て夢だったかのよう。でも、私の傍にマスターの姿はない。待っていてとも、ここにいてとも言われていない。進化をして、追いかける訳にもいかない。私が動いたら、動いたら、もしかしたら……死んで!
『信じて待てばえぇんや、強い人なんやろ=x
『……はい』
帰ってくる。帰ってこれる人。私の仲間は、ちゃんと頼れる強い人たちだから、大丈夫、だいじょうぶ。ダイジョウブ……?
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