もっと一緒にいたら分かるのだろうが、お生憎様、家に居続けることはできない。
久しぶりに家に帰った。チャイムを一度押して滅多に使わない鍵を使う。
バタバタ遠くから愛おしい宝物がやってきた。
世界の破壊を、破滅を願うだけだった幻聴が今日、明確な意志を語った。
ややは見事ワタシとの約束を守り抜いた。久しく行われなかった穏やかな日常。ワタシがこの場所でややを待ち、やってきたややはワタシの怪我を心配しながら食事を届けた。傷を癒す効果のあるオレンの実や、オボンの実。時に人が開発した薬。
雷に打たれた傷は癒えた。
『やや、今日はやけにご機嫌だな いいことがあったのか?=x
「おとうさんが かえってくるの!」
ニコニコと、ややは笑った。同時に理解した。そうか、お前が連れているのは父親のモノか。お前がどんなに父を愛おしく思おうが、父はそう思っていないかもしれないのになんて健気な。
『そうか やや 父は好きか=x
「んー……どうだろ」
純粋な好意が返ってくると思ったが違うらしい。
「いえに かえってこない おとうさんは や」
「きらいじゃ ないの や、なの」
帰ってくるのは嬉しいが、何処かに行ってしまうのは嫌だと。そうか、寂しいと感じているのか。
『やや お前は将来、何になる?=x
「わかんない」
『達成せずとも良い 何に成りたい=x
「いちばんになりたい」
一番。一番。それは愛情に飢えた子の声だった。
「おとうとがいるの。かわいいよ、かわいいけど……」
親の愛情が其方に行って寂しいのだろう。だからこうも、ワタシの所にやってくる。ワタシにはオマエしかいないし、オマエにしか存在を明かしていないから。
『愛い。嗚呼、愛おしや=x
『やや、ワタシのやや=x
『オマエをワタシの一番にしてやる=x
「ほんと!?」
一番だとも、今、お前が一等愛おしく思っている。
傍に控えていたプテラが吼える。ワタシの対応が変わったことに気付いたな。
「プテ……?」
白い火柱が上がり、それによりややと、プテラを分断する。
『やや、此方を見よ=x
『ワタシの傷は癒えた=x
『偏にこれもオマエの献身あってこそだ=x
『約束通り お前にワタシに名付けをすることを許す=x
「鳥さん、どこか行っちゃうの?」
『寂しいか? やや=x
「ん」
太陽が幾度も沈み、昇った。語り合った時間は僅かであれど、ワタシはお前を愛おしく思った。
『そうか ワタシも お前を失うことを考えると 寂しく思う=x
人の生命は短い。流星のように儚く消えるが
『死ぬなとは言わぬ=x
『人の死は 穏やかにあるべきだ=x
穏やかに眠るように、傷みなく死ぬべきだ。そう、これはワタシの願い。
『オマエが穏やかな死を迎えることを願っている=x
「
そうか、お前は見透かしていたか。ワタシの本性を。
『ふふ、良い音だ=x
「焔、焔、いかないで」
『存分に泣け 寂しく思うならばお前の名を届かせてみよ=x
『優れたる操り人としてワタシに挑むのであれば 受け入れよう=x
求め、思い焦がれよ。オマエなら許す。長く居続ければ自然に悪影響を及ぼす。……でも、ここは、ここだけは、残り続けてほしい。
火柱は落とした。プテラが咆哮をあげる。逃げるように癒えた翼を羽ばたかせる。ワタシがくれてやった羽を津波はきちんと受け取った。それを持っていれば大丈夫。
ぼんやりと遠くを見ている僕を咎めることなく、どうしたと尋ねてきた。
「いえ、何でもありません」
それに気付いたディランさんは、誤魔化す様にぐしゃりと僕の頭を撫でた。
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