「良かったわ、あなたが理解ある人造人間で。今までの人造人間とはなかなか話が合わなくて困っていたの。ドクターが殺されたのもそれが一因だったし…」 安堵の気持ちで、思わずわたしはこぼした。すると、意外な言葉が返ってきた。 「ふん、同じ技術で造られた者として一つ忠告してやる。お前は私を信用しすぎだ。それが仇となるかも知れんぞ」 「ええ、分かっているわ」 それでも終始態度を変えず物柔らかに話すわたしに、睨んでいるつもりなのか、彼はしばらくわたしを見つめていたが、何かを思惟するように話し始めた。 「さっきお前は名を名乗ったな」 「ええ、○○○よ」 「何故テストタイプにわざわざ名前があるんだ」 「何故って…そんなことを聞いてどうするの」 「ドクターゲロが付けたのか」 「…わたしはそう信じてるわ」 探るような話ぶり。何を考えているのかしら… 「私の名は誰が決めた。お前か?」 その言葉に少し虚をつかれた。 が、それはわずかにわたしへ歩み寄る言葉にも感じた。わたしも彼を造った人物の一人。お互いを知るのも悪くはない。 「そう、あなたはセル。わたしが付けた名よ」 「ほう…そうか」 「満足したかしら」 「まあな」 素っ気ないが、どこか上機嫌な様子。彼の素顔が垣間見えた。 「あなたって面白いわね」 「どういう意味だ」 「ますます興味深くなったということよ」 「わからん女だ」 他愛も無い会話…何だか嬉しかった。こんな気分は久しぶり。 きっとドクターの思いを果たすことが出来るわ。 そしてこの人造人間がいか程のものなのか、必ず最後まで見届けてみせる。 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |