西の都郊外に位置するジンジャータウン。 そこへ降り立った瞬間感じられる奇妙な空気。 人影も無くただ聞こえてくるのは、ビルや店からの軽快な音楽だけだ。 道端には、まるで抜け殻のごとく至る所に残された衣服や持ち物…そう、わたしがテレビ画面で目にしたあの光景が広がっていた。 単に人間が殺されているならまだしも、姿かたちさえ残されていないだなんて、随分と不自然ね… これは何者かによる仕業なのか、それともブルマが話していたタイムマシンと何か関係があるのか… 街中を歩きつつ、その異様な光景に目を配りながらしばらくこの状況の経緯を類推していた。 __そんな時だった。 わたしはふと足を止めた。 どこか自分自身にも似た気を背中に感じる。 まさか… 静かに振り向いた。 近いようで遠いその距離の向こうに、一人たたずむ姿が見える。 斑点に覆われた大きな緑の体には、長い尾のようなものがあり、どう見ても人間には程遠い一風変わった目つきで、その者はわたしを見つめていた。 これは… ドクターと共に造り出したあの人造人間…!? 初めて目の前にし、無意識に息を飲む。 「…あなたは…ドクターゲロの人造人間ね?」 しばしの間が訪れたが、何の表情も見せず相手は口を開いた。 「その気…お前は何者だ」 意外にも相手はわたしを知らないらしい。まさか別次元の者…?でも何故ここに… 「わたしもあなたと同じ、ドクターゲロのバイオテクノロジーによって造られた人造人間よ」 「何…?」 相変わらず表情は崩さなかったが、わたしには少しばかり驚いているのがわかった。 「とはいえ、わたしは人間ベースのテストタイプだから…あなたのほうがずっと全てにおいて優れた人造人間になるはずよ」 「ほう…私を知っているようだな。確かにまだ完全体ではないが…」 いささか警戒心を漂わせるその人造人間に対し、わたしは穏やかに話を進めた。 「わたしは○○○ 、タイムマシンで未来から来たの。もしかしてあなたも?」 「そうだ。何者かに殺された人造人間17号と18号を手に入れるためにな」 やはり… きっとブルマが話していたそのタイムマシンに乗ってきたのね。でも、17号たちは殺されているなんて…明らかに次元が違う証拠だわ。 「わたしの次元とは違うみたいね。でも偶然とはいえ、ドクターが最高の技術で造り上げたその人造人間と直接話ができるだなんて、不思議な気分だわ」 ドクターの顔が浮かぶ。自然と感慨深い心地になった。わたしには、この人造人間に伝えたいこと、知ってもらいたいことがたくさんある。 「あなたに会えて嬉しいわ。わたしはドクターゲロと共にあなたを造り出すため、長年に渡って力を注いできたから」 「…お前がこの私を?」 うなずくわたしを不思議そうに見つめる。 「でも…わたしの未来では、あなたもドクターも他の人造人間に殺されてしまって…」 「私の次元と随分状況が違うな…テストタイプの存在などデータには無い。そもそも何をしにこの次元に来た?」 わたしの話に、どこか腑に落ちないとばかりに問いかける。わたしは変わらず温容な態度で、 「あなたはドクターにとって最後の人造人間。わたしはあなたを必ず完全体にさせたい。ドクターと約束したの。わたしがここにいる理由よ」 彼は何も言わず、ただ静かにわたしを見つめている。 「あなたはまだ完全じゃない、今はそれ程力も無いはず。でも17号と18号を吸収すれば、完璧なパワーが手に入る。それこそ、ドクターやわたしが最も願っていることだわ。あなたに協力したいの」 すると、最後の言葉にようやく納得したのか、強気な笑みで相手は答えた。 「…なるほど、晴れて平等互恵という訳か。いいだろう、私も全ては完全体になるためにここにいる。同じ志しがあるなら、完全体への夢も近いものとなるだろう」 やはり特別な人造人間である故に理解が早いのか、それとも単に今までの人造人間とは違い素直なのか…とにかく話は通じたようだ。 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |