わたしは部屋の全てを覆うかのように巨大にバリヤーを膨らませていた。バリヤーを受けた気功波は、トランクスを巻沿いに地下から大きく散ったのだった。 深く地面は削られ、研究所はまさに吹きさらしとなった。 「さすがの威力ね…でもこれ以上は許されないわよ」 「くそ…バリヤーか…!」 トランクスは再び構える。 その彼をよそに、わたしは足元に倒れているクリリンを持ち上げトランクスの前に突き出した。 「連れて帰りなさい。そして二度とここへ足を踏み入れないで」 クリリンを受け取るも、意表を突かれ驚くトランクス。 「次はこうはいかないわよ」 わたしは幼生セルの保管準備に取りかかった。そのまま見向きもせずに作業をするわたしを、トランクスはただ立ち尽くしたまま見つめている。 次第に張り詰めていた空気は消えていった。再び研究所に静けさが戻る。しばらく黙り込んでいたトランクスが口を開いた。 「聞きたいことがある…お前も悟空さんを殺す目的があるのか…?」 孫悟空…? トランクスが口にしたその名前に思わず反応した。 「孫悟空は生きているの?」 「もちろんだ…!」 …なるほど。 このトランクスがわざわざタイムマシンでここへ来た意味が、やっと理解できたわ。 「そうね、そういった目的は無いといえば嘘になるけど…わたし自身の目的は、ドクターが残した研究を引き継ぐ事よ。それが彼の意思そのものを継ぐことになると思っているから」 「結局…人造人間は皆、悟空さんを殺すのが目的なのか…たとえドクターゲロがいなくなったとしても、それは変わらないんだ。そうはさせない…!必ず止めてみせる!」 あの時の彼も、どこか必死だった。 きっとこのトランクスも同様に人造人間たちを止めに来たのね。 「威勢がいいのは、いつでも変わらないわね」 「…?」 「あなたは正義感が強い。決して悪いことじゃないわ。でもそれが仇となる場合もあるのよ、間違って死なないようにすることね」 「なっ…」 虚をつかれ、戸惑うトランクス。 「またどこかで会うことになるかもしれない。それまでに少しでも腕を上げておきなさい」 太刀打ち出来ないと悟ったか、ただ何も答えられなかったのか、トランクスはその場を耐え忍ぶように、後ずさりする。どこか複雑な思いを抱いているようだった。 その時トランクスは、足元に踏みつけたある設計図を目にし、それと共にクリリンを連れ、飛び去っていった。 それからわたしは、ひとりその場に留まり黙々と作業を続けていた。 とはいえ頭の中では、ここへたどり着くまでに遭遇した予期せぬ出来事に、思いを巡らさずにはいられなかった。 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |