ふと目が覚めると、北の谷は朝を迎えていた。 いつの間にかしばらく眠っていたらしい。 思い立って、デスクに転がっているラジオの電源を入れる。 地元のニュースでは相変わらず、あちこちの街で引き起こる住民消失の報道で混乱を見せていた。場所は…西の街郊外からも大分外れてきている。南へ向かっているようにもうかがえた。 そのニュースでセルは無事であると知ったわたしは、再度彼との合流を考えていた。 そう簡単にやられるとは思っていないけど、さすがにあの場で離れたのは気の毒だったかもしれないわね。 カプセルへの保管はどうにか終えることが出来た。手の中のホイポイカプセルを見つめる。 これはある意味、一番最後の手段となるのかも…そう思いつつ、わたしは研究所を後にした。 西の郊外を抜け、南へ向かい飛び続ける。 さて、どうやってセルを探し出すか…彼がわたしの気に気づいてくれるのが一番早いのだけど。 ひとまず街を見下ろせる丘に降り立った。 腰を下ろし、研究所から持ち出したラジオを再び付ける。 相変わらずの報道。次第に耳障りになってきた。 周波数を変えてみる。クラシックな音楽が聴こえてきたところで、その場で寝転がり、流れる雲をぼんやり眺め始めた。ラジオから流れる旋律がその様子とまるでシンクロしているかのよう。 空ってこんなに青くて穏やかなものなのね。 でも地上では、どう見ても混沌としたあり様…何だか不思議な気分だわ。 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |