Story:06 ターゲットの行方-2-



そうやって、しばらく空を眺めていたわたしの顔に、ふっと大きな影が差し込んだ。

「なんだ、用は済んだのか?」

運良くセルはわたしの居場所に気付いたらしい。

「ええ、あなたも無事だったのね」

ラジオを止め起き上がる。

「わざわざ研究所へ何しに行ってたんだ」

「今のあなたが気にするような事ではないわよ」

「答えになってないぞ」

彼なりにいろいろと気になるようだ。でもわたしはあえて答えるつもりはなかった。

「それより、17号たちを探すのが先よ」

「ちっ…」

案の定不満げにわたしを睨みつつ、セルは丘の先に広がる街に目をやる。

「ヤツらもどうせ孫悟空を探しに行っているに違いない」

「そうね。確かにそうかもしれないけど、
 彼らがドクターの意志どおり行動しているとはなかなか考え難いわ」

「まあな」

彼らは自分の意志とは裏腹に、無理矢理改造された人造人間。わたしの次元でもあれだけの奔放さだったのだから、何となく検討はつく。

「でもしばらくの内は心配ないはずよ。17号たちもかなりの強さを持っているし、彼らを殺せる者なんてまずいない。緊急停止用のコントローラーも無いのだから。あなたは時間の許す限り、より多くエネルギーを集めておく事ね」

「もちろんそのつもりだ」

「その量によっては、後々完全体となった時の差も大きいわ」

「ほう…そうなのか。こいつはいい事を聞いた。お前は良くも悪くも頭が回るな」

セルの意地悪なセリフに思わずわたしは苦笑いした。そんな彼もどこかそれを楽しんでいるように見えた。

「念のため、わたしは孫悟空の家へ向かってみるわ」

わたしは早速17号たちの足取りを追うため、東の山村へ向かう事にした。

…が、セルに背を向け歩き出すわたしを、彼が急に止めた。

「待て」

振り向こうとした瞬間、突然目の前に彼の尾が。その先端を顔で交わす。

「…これはどういう意味?」

「ふん、それなりにできるようだな」

「…?」

突然の彼の行動にさすがに妙な気分になった。第一、殺気が無い。ただわたしの反応を見たかったのか…

「そう勘ぐるな。別にお前を吸収しようなど考えてもいない」

ポツリと彼は答える。何を考えているのだか。疑わしくもなるが、ここはあえて彼を立てることにした。

「あなたならすぐわたしを超えられるわ。あなたは大いに可能性を秘めているのだから」

「随分とおだてるな」

セルは何かを察するように反応する。

「あなたに期待しているということよ」

「…なるほど」

疑い深い返事。勘ぐらせてるのはお互い様なのかもしれないけど、わたしには、彼に信用してもらう必要がある。ドクターの意志を果たす為にもそれが重要だから。

「セル、一つ約束してほしいの」

「約束?」

「あなたが完全体となるまで、必ず最後まで見届けさせて」

真剣に話すわたしに何故か彼は笑った。

「くくく…何を言うのかと思えば、そんな事か。お前の好きにすればいいだろう、私に聞くまでもない。」

「それでは意味がないのよ。完全体のためにもわたしが手を貸すのだから、少しは信用して」

「それは考えておく」

相変わらず笑いながらも、セルはそう言うと街へ向かい走り去って行った。

「もう…」

気ままな人…結局彼も17号たちとさほど変わりがないじゃない。

この先も手を焼く事になるのかと少々面倒に感じながらも、わたしはとにかく東へ向かうことにした。

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