Story:08 不覚の判断-3-



その頃。

16号が立ち去った先には、再び戦い続けている17号とピッコロの姿が見える。二人は互角の戦いを続けていた。決着はまだつきそうにない。

「あいつ…17号と互角だよ」

その戦いぶりに感心する18号。

「あの男はどうやらピッコロ大魔王ではないようだ」

「何?」

16号の言葉に一瞬17号も反応するが、素知らぬ顔で切り返す。

「なるほど…確かに大したパワーだ。だが相手が誰だろうが、オレには関係ないさ。まだ孫悟空の居場所を教える気はないのか?」

あくまで余裕な態度を貫く17号は、対するピッコロに改めて問いただした。

「貴様らの目的は孫悟空を殺すことだろう。教える訳もない」

ピッコロも相変わらずその答えを閉ざす。

「せいぜい言ってるんだな。いくらパワーは互角でもオレのエネルギーは永久に減らない」

そう言い17号は再び構え始めた。それを見てピッコロもまた戦闘体制に戻る。



その時だ。
彼らのそばに何者かの姿が現れた。

その気配に気付き姿を目にしたピッコロは、思わぬ人物の登場にその体を固まらせた。

「セ、セル…!!しまった…!」

「このチャンスを待っていたぞ」

それは正しく○○○が願っていたセルの姿だった。

「○○○ご苦労だった。あとは私がやる」

そばへと降り立ったわたしに告げる。あの後かすかにこちらへと近づいて来るセルの気を感じ、わたしはその場で待ち続けていた。

「これだけ待たせておいて…そう簡単に行くとは思えないわ」

「ふふ、見くびっては困る」

どこか余裕の表情のセル。それだけ充分なエネルギーが集まったってこと…?



「何だ?あの変なバケモノは…」

もちろん何の面識もない17号たちは、突然現れた得体の知れぬ人物にあっけに取られていた。

「あの女、まさかあいつの仲間なのか?」

18号の言葉が耳に入るも、何も言わず険しい顔つきでセルを見つめる16号。

そんな彼らが見つめる中で、セルはたちまち気を高め爆発させた。そのパワーは…予想をはるかに超えた大きさだった。

「セル…あなたいつの間にそれだけのエネルギーを…!?」

「お前は黙ってそこで見ていろ」

そう言ってセルはピッコロたちがいる方向へと歩いてゆく。ピッコロもその気の大きさに、激しく動揺しているようだ。
セルは17号へと襲いかかり、吸収を試みる。セルの完全体化について17号たちに話したピッコロは、途中それを阻止しようと立ち向かうが、無残にも海へと葬り去られた。

圧倒的な差。
これが…ドクターが遺した最後の人造人間の力…!改めてドクターの思いが甦る。これだけの力が備わったのなら…今こそが完全体へとなる時なのかも知れない。




…が、そう思った矢先だった。
16号がセルへと歩み寄る姿が目に入った。

あの男…まさかセルと戦う気…?

17号の吸収が間近となったその状況の中、16号が不意にセルへと向かい大きく拳を振り上げた。


まさか__!?


「セル!!」

思わずわたしは大声で叫んだ。16号の拳に勢いよく飛ばされるセル。
あの人造人間はただ者じゃない。それだけに気を抜けない相手だ。やはり邪魔するつもりなのね、あの男…!

「新手か…?」

背後からの不意打ちにもセルはあくまで冷静ではあった。それでもあの時容赦なく突き付けられた16号のパワーに、わたしは未だ警戒心を持っていた。

「セル!その人造人間には注意して!」

「お前は黙っていろと言っただろう」

「セル…!」

わたしの忠告をよそに戦い始めた二人。さっきまでの期待に満ちた感情などとっくに消え去り、今度は不安が募る。

何をわたしは焦っているのか…セルはあれだけのパワーを上げて来たのだ。彼を信じて見守るしかない。いや、ここでじっとしていていいのか…
16号がセルに気を取られているのなら、その隙に17号たちを捕えることが出来るのはわたしだけ…!


思い立った瞬間わたしは17号の前へ立ちはだかっていた。突如目の前に現れたわたしに驚くも17号はとっさに抵抗する。

「お前…あのバケモノの仲間か!?」

「悪いけど、こっちは急いでいるの」

素早く17号の腕を掴んだ後、セルへと思い切り投げ飛ばした。

「セル!!」

飛び込んで来る17号にセルは気付くが、17号も負けじと空中でその体を制止させた。何かと手こずらせる相手だ。
だとしても、このチャンス逃しはしない…!

再び17号へと足を向かわせたその時__



「…お前もヤツの完全体化に加担するのなら、やはり放っておく訳にはいかない」

背後からの声。

16号の腕がわたしの頭に突き付けられていた。

とっさに振り向くも…既に遅かった。






そこからはしばらく記憶がない。

ただ…

わたしの名を叫ぶセルの声…

かすかにそれが聞こえたのを覚えているくらいだった。

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