遠くからわたしを呼ぶ声が聞こえる。 一筋の光が揺らいでる……あれは何…? 誰かそこにいるの…? よく見えないわ。 もっと近づきたい… もしかして…ドクター…?迎えに来てくれたの? でもまだ会うわけには… まだ約束を果たしていないもの… わたし… 行かなきゃ… 「…○○○起きろ。18号を逃した、探しに行くぞ」 これは…セルの声だ。 ゆっくりと目を開く。 目の前にいたのは…姿形の違う別の人物。腰を下ろし、しばらく側についていたようだ。 わたしの方はと言えば…頭が痛い。上半身がボロボロだ。 「セルなの…?」 ようやく目を覚ましたわたしを見て、彼は立ち上がった。 「セル」 「ん?」 「足でまといになるってわかっていたのなら…そう言ってくれれば良かったのに」 すると相手は笑いながらこう答えた。 「もし言ったとしても、あの時のお前に聞く耳などあったと思えんがな。沈着冷静と思いきや、なかなか無茶をする女だ」 確かに彼の言うとおりだ。 何も言えずそのまま黙り込むしかないわたしは、傷だらけの体をゆっくりと起こした。 「だが17号の吸収は成功した。この通りな。あとは18号だけだ」 「わたしは…しばらくここにいるわ。こんな状態じゃ余計足でまといになるだけだし…」 「何だ、随分と弱気だな」 元気のないわたしの言葉に、セルは表情を落とししばらくこちらを見つめているようだったが、どこかわざとらしくもからかうように、 「ふふ、今まで余裕の物腰だったお前が不覚を取るとはな。さすがに16号には敵わなかったわけか」 「笑わないで」 うつむいたまま相変わらずの暗い返事。 すると、決して機嫌が良いとは言えないわたしにセルは意外なことを口にした。 「安心しろ。吸収によって得たパワーは予想以上だ。今度は何かあっても助けに行けるだろう」 思わずセルの顔を見上げた。 …が、わたしに背を向け、彼の視線は18号が逃げたらしき方向にあった。 気を使ってそう答えたのか、それともわたしの思い過ごしなのか… 「そう…そこまでの力を手に入れたのなら焦る必要はないわ。18号たちもさすがに逃げ切れるとは思っていないはずだし」 「お前の言う通りかもしれんが、だからと言って悠長にはしていられん。すぐにでも探し出し完全体になるのだ。のんびりするのはその後だ」 こちらを振り向き、先ほどの台詞とは打って変わり口調を強めた。セルはあくまで完全体になることを急いでいるようだ。わたしも本来ならそう考えるはずだけど… 「…わたしはここで少しでも回復を待つわ」 「なんだ、結局来ないのか」 結局って… 「あなた一人でも充分探せるわ。何か都合でも悪いの?」 「ふん、都合も何もない。最後まで見届けるといったのはお前だろう」 その言葉に何となく謎が解けた気がした。覚えてくれてたのね。 「大丈夫よ、後で追うわ」 「ふん…さっさと来るんだぞ」 ようやく見せたわたしの笑顔に、セルはどこかぎこちない様子で答えそのまま島をあとにした。 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |