Story:10 守るべきもの-1-



海上を飛ばすわたしに激しく巨大な気が幾度となく降りかかる。

これ程の大きな気を感じたのは初めてだ。しかもこの気はどう考えてもベジータの気。
セルは…一体どうなったの…!?

もちろんもう一つ感じる気こそセルのものだが、この差はどうにも信じ難い。



次第に彼らがいると思われる島が見えてきた。徐々に近付くその最中、前を飛んでいたトランクスが上空で立ち止まった。

な...何…?

胸騒ぎがおさまらないわたしは、彼の些細な行動にさえも過剰に反応してしまう。


「…お前は、セルを完全体にさせようとしているのか?」

こちらへ振り向きもせず話しかけるトランクス。

わたしは何も答えない。何かを思案するように話す彼に無意識に構え始めていた。彼らはあくまで完全体を阻止しに来たのだろう。話すつもりもない。

「セルは、父さんが倒すかもしれない」


____!?


その言葉に、胸騒ぎの糸が切れた。


「な、…!」


思わず言葉が詰まる。

まさか…ベジータはセルの上を行くとでもいうの…!?




目の前の島では爆発が起こる。戦闘はまだ続いているようだ。わたしはとっさにその場所へと急いだ。

そんなはずはないわ…17号を吸収したセルを超える者など存在するはずがないのに…!



が…わたしが目にした光景はそれを覆すものだった。

セルは息を切らしながら海岸から這い上がり、ようやく立ち上がる。彼の表情は、まるで絶望に満ちたかのように険しいものだった。

「こ、こんなヤツ如きに…!!」

「これ程まで差がついてしまったとはな。ぶっ殺すのがバカバカしくなってきたぜ」

そう吐き捨てたベジータは容赦なくセルを蹴り付ける。セルは全くもって力も及ばず、されるがままにして岩山と共に崩れ落ちていく。
わたしは只々その状況に目を疑うばかりだ。

こ、こんなはずは…

わたしはどうすれば…

- 28 -



*前次#


ページ:

ストーリー:











小説TOPページへ

サイトトップページへ