「父さんは逃しても、このオレは逃さんぞ!!」 トランクスがセルの前に立ちはだかる。わたしはその声に我に帰った。思わぬ邪魔者にセルは再び焦り始めた。 「くっ、トランクス…!!邪魔をする気か…!?」 「何をしているトランクス!」 ベジータが彼の行動に反論するが、トランクスは断固として動じない。 「父さんは間違ってる…!お前をみすみす完全体にさせるなど…オレは許さない…!!」 そう言い放った瞬間トランクスは、セルへと素早く殴りかかった。セルはわたしを放り投げるや否や、勢いよく岩山へと叩きつけられた。 「セル__!!」 その叫びも虚しくセルはまたも崩れ落ちて行く。 あのセルまでも…あんなに苦しそうな顔… もうこんなの見たくないわ… わたしにはどうにも出来ないの…? 何故かドクターを失ったあの時の記憶が脳裏をかすめた。確かにあの事件が起きたとき、わたしはドクターの側にさえいなかった。 でも今は…? いいえ、わたしは…セルを手助けするためにここにいる。守るべきものがすぐ側にあるわ。側にいる限り、まだわたしには出来ることが残ってる。 そう、完全体へのチャンスを再び得た以上これを無駄には出来ないわ…! 何としてでも…!! 「トランクス!!これ以上邪魔をしないで!!」 上空に残されたわたしは、敵わないのを承知でトランクスに向かい気功波を放った。それも何度も何度も。 わたしは必死だった。 「何故だ!?何故そうまでしてヤツを完全体にさせようとするんだ!?あいつは全てを破壊するつもりなんだ、それをわかっているのか!?」 次々と放たれる気功波に身を防ぎながらトランクスは叫ぶ。わたしは大きく息を切らし、その手を止めた。 「…そうね、そうなのかもしれない…でもわたしにはドクターとの約束を果たす使命があるの」 「約束…!?完全体にさせることが約束なのか!?そんなの馬鹿げてる…!」 馬鹿げてる…? 彼との最期の約束は結局はくだらないものだと言うの…!? 「あなたにはドクターのことなど分からない…ましてやこれがわたしにとってどれ程重要なことか、知るよしも無いわ!」 「ドクターゲロは悟空さんを殺すのが目的だ…!オレはそれしか知らない、でもこれは事実だろう!?」 彼には分からない。わたしの気持ちなど… ならばこれだけは言わせて…! 「ドクターは…わたしの唯一の家族よ。例え試作品でしかないわたしでも、娘のように扱ってくれた。彼が持つ知識、研究技術、あらゆることを教えてくれた…いつでもそばにいてくれた人よ…!そのドクターを信じているわたしはそれ程愚か者なの…!?」 「む、娘…!?」 はち切れそうな程の感情が込み上げてくる。 わたしは… 悔しかった。 悲しかった。 そして寂しかった。 あの時の気持ちは今でも変わらない。 だからこそ… 「彼はもういないの、彼の意思を引き継げるのはわたししかいないのよ…!あの荒廃した未来を生き抜いたあなたなら、大切な人を無くす者の気持ちくらい分かるでしょう!?」 トランクスの表情にどこか陰りが見えた気がした。わたしの言葉に何か思う節があったのだろうか。 だがもう遅い。 そのようなことに気を向ける余地などない。 「かめはめ…」 わたしは力を振り絞り、巨大な気功波を撃ち放った。 「…波____!!!」 そして__ 対するトランクスから放たれた気功波が瞬く間に目の前へと近づき、わたしの想いもはかなく全てを飲み込んでいった。 あの別れ際に、にわかに微笑んだドクターの顔が浮かんだ。 ドクター… わたし やっぱり駄目だった わたしはただのテストタイプ 結局何もできないのね ごめんなさい… ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |