トランクスは再び思い出していた。 完全体に反論した自分の言葉に、それを認めつつも使命だと言い放った、あの時のわたしを。 あの人造人間はあんなにも真剣だった。だが目の前のこいつは…まるで気ままに楽しんでいるだけじゃないか。 完全体にさせることが使命…? 本当なのか…? 「う、嘘だ…そんなのどう考えたっておかしい…!」 トランクスが漏らした言葉にセルは不意に振り返る。 「あの人造人間が本心でそんなことを認めるとは思えない…!」 「人造人間…?まさか○○○のことか」 「お前の目的はわかった…だが彼女は関係ないんじゃないか…!?」 トランクスの意外な発言にセルは一瞬表情を止めたが、 「いきなり何を言い出すのかと思えば…そんなことか」 セルはどこかしら気にいらない様子だ。 「○○○と何を話した」 何も答えないトランクス。セルはしばらくトランクスを睨むような目で見つめていたが、ひと呼吸し話を続けた。 「ふん…まぁいい。何を話したのか知らんが、○○○は私を必要としている。ドクターゲロがいなくなった今ではそうせざる得んのだ」 「お前は…それを分かっていて彼女を利用しているだけなんじゃないのか…!?」 「利用だと…?」 トランクスの言葉が気に触ったのか、セルは再び睨むように彼へ目を向ける。 「それは違う。利用されてるのはむしろ私のほうだ」 「ど、どういう意味だ…!?」 「だが、○○○にはそんな意識もない。ただ純粋に…ドクターゲロの意志を継ごうとしているだけだ」 トランクスにはセルの口調がどこか静かに落ちて行くのがわかった。何かを思い出しながら話している…そんな様子に見える。 「その心の内にお前ごときが入る余地などない」 一体何を言おうとしているのか…そんな目でセルを見つめるトランクス。 「お前にはわからんことだ、この話は終わりだ」 そう言い切り、セルはわたしの側へとたどり着く。そしてぼろぼろになったわたしを抱き上げ、何を思ったか再びトランクスに話しかけた。 「さっきお前は、この女は私の目的とは関係ないと言ったな。○○○が何故この場にいるか聞いたか?」 急な問いかけに、何を考えているのかも読めずその場に立ち尽くすトランクス。 「全てはドクターゲロの意思を実現させるためだ。私はそのドクターゲロから造られた。つまり私もその意思の一部ということだ」 「○○○からすれば、私の目的はドクターゲロの目的でもある。とは言え、この女はどうも何かにつけドクターゲロに置き換える嫌いがあるようだがな…」 意味深げに語るセルの言葉を、トランクスは何も言わず聞き続けていた。 ただ何となく分かったのは…セルはこの人造人間がどういう人物なのかを良く理解しているということだった。 「それはそうと、仙豆は持ってないのか?○○○の分だ」 セルはトランクスの方を振り向く。先程の重々しい雰囲気は消えていた。 「そ、そんなもの…持ち合わせてなどいない」 そう小さく答えるトランクスを横目に、セルはそのままわたしを抱きかかえ立ち去っていった。 その場に残されたトランクスの胸の奥には、どこか納得がいかないもどかしさが残った。 あの人造人間はこの先どうなるのか。何故かそれが気がかりに思う。 だが… 今の自分にはどうすることも出来ない。 ただ悟空が強くなって戻ってくることだけを願うしかないのだ。 __もちろん、 意識も遠のきすっかり気を失ったわたしには、 この時彼らが何を思ったのかなど知る由もなかった。 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |