遠くから微かに響く声… 一筋の光が揺らいでる……あれは何…? あれは…… 紅く…深く燃える…… まるで炎のよう。 その先に見えるものが知りたい あれは…誰なの……? ドクターなのかどうか…もうわからない よく見えない… もっと近づきたい… もっと… もっと側に… こんなに こんなに手を伸ばしてるのに… 次第にその手に、腕に、頬に、ふわりとあたたかみが感じられ、わたしの視界に現実が戻る。 そのすぐ先には、目覚めたわたしを静かに見つめる紅い瞳があった。 その瞳はどこか深く…まるで沈んでいた記憶を呼び覚ますような、それでいて思わず震撼させるような…不思議な瞳だった。 それでも何故だろうか、こんなにも安心できるのは… もしかして… 「…セル……?」 相手がふっと微笑んだように見えた。 その顔に… 何とも言えない揺れるような感情が、身体の奥底から波紋のように広がっていくのが自分でもわかった。 この気持ちは一体…… 「…しばらくぶりと言うべきか、それとも改めて自己紹介でもしたほうがよいかな?」 わたしを抱きかかえながら悪戯っぽく笑う。 「あなたは…」 「ふふ、冗談だ。安心しろ、事は済んだ。お前も今は何も考えずに休んでいればいい」 その言葉に小さく頷き、わたしはか細い息を吐きつつも彼の胸に身を任せた。 こうして目が覚めるたびに、わたしの目の前にはまるで別人のような彼が現れる。とはいえ、それはただ見た目が違うというだけ。 そう。こうして身体がボロボロになる度、わたしの側にいたのはいつも彼… セルだった。 でもそれは何を意味するのかなど、その時のわたしにはまだ分からなかった。 時折息が苦しくなる。 身体に受けたダメージは限界に近づいていた。 そんなわたしを案じながらも、 「何もしてやれないというのは、こうももどかしいものなのか…」 どこか苛立ちを抱いているかのような表情を見せ、セルはつぶやく。 「また…足でまとい…ね」 口に出した声は、かすれながら風に流されていく。 今のわたしはどう考えても彼のお荷物みたいなものだ。トランクスに対し、力が完全に劣ることを承知で行動に出たわたしは…きっと彼の目には、無謀で愚かな者としか映らないのだろう。 …が、セルから出た言葉は一つもそう思わせる欠片もなかった。 「もう急ぐ必要も無い。ようやく時間が出来たのだ、そういう話はやめておけ」 その言葉を耳にし、ようやくわたしはセルが完全体へとなったのだと理解した。 「…セル…あなた、完全体に…」 するとセルはわたしの頬に触れ、またあの表情を見せた。自信に満ちあふれた、まるでわたしを大きく包むような… 今はこの人になら、わたしの全てを委ねてもいいのかもしれない…何故かそう思わせる。 セルって…こんな人だったの…?何だかわたしのほうが変な気分に誘われてしまう。 「こうして完全体の姿をお前に見せることもできた。しばらくは二人の時間だ」 相変わらず笑みを浮かべながらの台詞だ。これって…わたしを半分からかってるの…? 「随分と…ロマンティックなこと…言うのね…」 「可笑しいか?」 「あなたが…何だかあなたじゃ…ないみたい…」 わたしの言葉に首を傾げるセル。その何気ない仕草にさえ、まるで不意を突かれたように反応してしまう。 何だろう…こんな気分は初めてだわ… 「それはどういう意味か気になるな。後でゆっくり教えてもらおうか」 そう言ってセルはわたしをその場で寝かせた。 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |