静かに流れる空気の中、崩れるような地響きに目が覚める。目覚めた目の先に広がる空は、朝を迎え澄みきっていた。雲から漏れる光が眩しい。わたしにとっては長い眠りからようやく迎えた現実…そう思える。 またあの地響きが聞こえた。近くのようだ。 まだ回復し切れていない重い身体を起こし、音のする方へ向かう。 すると、うろ覚えに見た記憶のある…あの彼がいた。 器用に岩をブロックに変えたかと思うと、それらを地面に敷き詰めている。何か土台のようなものを作っているようだ。 しばらくその様子を見ていると、彼はわたしの気配に気付き声をかけた。 「○○○、起きたのか。調子はどうだ?」 「あ…、ええ…」 何と答えれば良いのか、なぜか言葉が出ない。改めて完全体となった彼を目にし、わたしは今までとは違う何かを感じていた。 わたしのどこかぎこちない様子に、彼は微笑しつつ歩み寄って来た。その距離の近さにあの時のかすかな記憶が蘇る。あの包まれるような穏やかな記憶が… 「これは何だと思う?」 開けた場所にポツリと作られたその整った土台を見てセルが言う。つられてわたしもその方向に目を向けるが、もちろんよくわからない。セルに視線を戻すと、思わずはっとした。 彼から漂う、自信に満ちあふれたその、ふわりと大きな空気がわたしに触れたようで、昨日の記憶が再び頭をよぎる。 振り向いてわたしを見るその目に、今彼は何を思ってるいるのか、そんな感情が自然と湧き上がる。いえ、それよりわたしはさっきから何を考えてるんだろう… 向けられた視線がもどかしく、とっさにそれを打ち消そうとわたしは一言つぶやいた。 「これは…」 ひとつ間が空いたかと思うと返事が返ってきた。 「これはリングだ。9日後ここで面白いことが起こるぞ」 「面白いこと…?」 「私はTV局へ向かう。もうひと仕事あるんでな。お前はここで待っていろ」 TV…?ますますよくわからない。 セルはその様子に察したようだが、後でゆっくり話すと、その場を立ち去っていった。TV局って…テレビにでも出るつもりなの? セルの言う「リング」の端でしばらく座り込む。 「試合でもするのかしら…」 リングを眺めつつぼんやり考えていると、ベジータやトランクスたちと対峙したあの時の波乱な情景が目に浮かぶ。気が動転していたあまり記憶が曖昧だが、とにかく目的を果たすために必死だったことはよく覚えている。結果的にはセルは完全体となることが出来たのだ。 これで良かったはず。ドクターもきっと喜んでくれているはずだわ。でも何かしら… どこか胸の内に釈然としない複雑な気持ちが残っているように思えてならない。 まだ事態は沈静したばかり。落ち着かないのは当然なのかも。気を失ってたのだし… そう自分に言い聞かせ、セルが戻るのを待った。 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |