わたしは手にある仙豆を口にしてみることにした。セルはそんなわたしの様子をじっと見つめている。 「あのトランクスが何を考えているのか知らんが…お前も運が良かったな」 どこか気に入らないような、そんな口振りだ。 「トランクスが何をしようと…わたしには関係ないわ」 体力も気力も回復し、わたしは両腕を高く上げ背伸びした。この仙豆の力にはさすがに驚いてしまう。先程までの身体の重さは全く消えていた。体力が回復したことで気分も晴れたような心地だ。 「おかげで回復できたのだから、これで充分よ」 わたしはリングの中央へと上がり、そこからの景色を見渡しながら話を続けた。 「まさか孫悟空が現れるとは思わなかったけど、きっとあの男もあなたがどんな人物か気になっていたのね」 「まぁな…セルゲームは完全体となった力を試すこともできる。ある意味私にとって重要なのだ。孫悟空との闘い…ますます楽しみだ」 その話にようやくわたしは、セルが行うというその武道会の意味が理解できた。 「力を試す…そういうことだったのね。あなたってホント戦うのが好きなのね」 「そう言うお前はあまり好きではなさそうだな。腕は悪くないと思うが?」 「あなたほどの力を持った者に言われては、茶化されてるとしか思えないわ…」 少し不機嫌な態度で言い返すと、セルはからかうように笑っている。でもそんなやりとりが何だか嬉しく思えた。やっとここまでこれた…そう思えた。 きっとドクターも… わたしは今の思いをセルにも伝えるべく話を切り替えた。 「あなたがこうやって完全体として戦える日が来たことをドクターもきっと喜んでくれているわ。わたしは本当に嬉しいの」 すると、セルからは先程までの悪戯な表情は消えていた。 「完全体の力を試す…ドクターゲロもそれを望んでいたと?」 「ええ、あなたの意思はあなた自身であると同時に、ドクターから授かったものでもあると思うの。何故なら、その重要なベースを作ったのはドクター自身だからよ。未来への目的を果たすために、これまでの彼が持つ全てが結集されているわ。そして、それに基づいてコンピュータがプログラムを組んだのよ」 「ドクターがあなたを造ったのは孫悟空を倒すためでもあるし、あなたにはそれを託されているわ」 そのまま口を開かず、話を続けるわたしをいぶかしげに見つめるセル。 「セルゲームの話…もちろんゲームそのものを想像してはいなかったとしても、きっとドクターもあなたが完全体の姿で戦うことを望んでいたはずよ。あなたの自信を持って戦う姿が見られるなら、わたしもここまで来た甲斐があったというものよ」 しばし間が空いたと思ったが、目に前の相手からは何の反応も返ってこない。 「…何か不満でも?」 「私の発言行動全ては、ドクターゲロ自身のモノあるとでも言いたげだな」 「全てだなんて言ってな…」 「お前はそれで、私という完成品を高く評価しているつもりらしいが…迷惑な話だ」 な…? 「何かにつけお前はドクターゲロの名を出すが…」 何よ、急に… 「お前は自分の意思というものはないのか」 突然の問いにわたしは思わず言葉を返した。 「これがわたしの考えではないとでも言うの?」 「刷り込みという言葉を知っているか」 「き、急に何を…そんな言い方ないわ…」 思いも寄らない言葉を受け、わたしは戸惑っていた。 「お前は今まで、ドクターゲロの意志を尊重しそれに基づいて行動をしてきた。私を無事完全体へと進化させるのが今までのお前の仕事だったわけだが、今やそれも成し遂げてしまった」 セルは淡々と話を続ける。 「ここまではいい、お前がドクターゲロを語ろうとも、それに基づき行動する意味は理解できる。だがこの後が問題だ。ドクターゲロが言うお前のやるべきことなど既に終わってしまった今、お前は用済みもいいところだ。それでもその男に頼る心理が理解できん」 不愉快とも言えるその言葉に、わたしは思わず声を荒げた。 「用済みだなんて…言い方にも程があるわ…!ドクターを誰だと思っているの、彼はわたしたちを造り上げた恩人なのよ!?わたしにとってはドクターを頼るというより、大切な支えだと思ってるのに…!」 反論するわたしに、セルは態度を一向に変えず棘(とげ)のある言葉を繰り出す。 「なるほど、では次だ。未だドクターゲロに従順なお前が、他にやるべきことなど何がある?」 「それは…」 確かにわたしは今まで、ドクターとの約束を果たすことだけを考え行動してきた。でもそれを成し遂げた後のことなど全く考えもしなかった。 いや、それよりもわたしにとっては、ドクターとの約束に「終わり」があることなど考えもしなかったのだ。 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |