しばらく沈黙が続いた。 ドクターは静かに話を切り出した。 「○○○…いいか、よく聞くんだ。過去へ戻り私と会うのだ」 ドクター…急に何を言い出すの…? 「あの人造人間だけは、何としてでも成功させたい…必ず完全体にさせるんだ」 まさか、ドクター… 「残念だが私は持ちそうに無い…お前一人で行くんだ」 そんなこと出来るはずもない…わたし一人で何ができると言うの…? 「ド、ドクターそんなこと言わないでください…!わたしにはあなたしか頼れる人がいないのに…」 「私も今や頼れるのはお前しかおらん。お前には多くの技術を教え込んできた…だからこそお前に頼むのだ、できるな?」 確かにわたしは長年に渡り、ドクターから様々な研究技術を教わった。でもそれは、ドクターがいなくなった時のためだなんて、そうは思いたくない。 彼は以前に19号によって自身の体を改造し、永遠の命を手に入れた。そしてわたしは、ドクターと共にこの先もずっと研究を続けて行く特別な存在なのだと、そう思っていた。 それがまさかこんなことになるなんて… 何も返事ができないわたしに、再びドクターは強く問いかける。 「○○○…これを成功させれば、たとえテストタイプとはいえ、お前を造った意義も大いにある…お前がいるからこそ、この研究もあるのだ。無駄にしたくはない…そうは思わないか…?」 「…はい…おっしゃる通りです…」 どうしようも無く涙があふれてきた。 「まずはカプセルコーポレーションへ行け。あそこにタイムマシンがあるはずだ」 「タイムマシン…わかりました」 「うむ、では○○○…成功を祈るぞ」 言葉とは裏腹に、彼の表情はどこか寂しく見える。 ここで… お別れなの…? 「お前はいい娘だった…会えてよかったよ…次は過去で再会しよう」 そう言い残した後、火花が大きく散り爆発した。 ドクターゲロの頭はバラバラに砕けていった。 わたしの目の前には、あのドクターの姿は無く 小さなガラクタの破片が散らばっているだけ… どのくらいだろうか。 暗闇の研究所の中で、わたしは独り座り続けていた。 静けさが物悲しい。 壊れた扉の向こうから差し込む陽の光だけが、何故か妙に優しく見えた。 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |