Prologue: プロローグ-3-



しばらく沈黙が続いた。


ドクターは静かに話を切り出した。

「○○○…いいか、よく聞くんだ。過去へ戻り私と会うのだ」

ドクター…急に何を言い出すの…?

「あの人造人間だけは、何としてでも成功させたい…必ず完全体にさせるんだ」

まさか、ドクター…

「残念だが私は持ちそうに無い…お前一人で行くんだ」

そんなこと出来るはずもない…わたし一人で何ができると言うの…?

「ド、ドクターそんなこと言わないでください…!わたしにはあなたしか頼れる人がいないのに…」

「私も今や頼れるのはお前しかおらん。お前には多くの技術を教え込んできた…だからこそお前に頼むのだ、できるな?」



確かにわたしは長年に渡り、ドクターから様々な研究技術を教わった。でもそれは、ドクターがいなくなった時のためだなんて、そうは思いたくない。

彼は以前に19号によって自身の体を改造し、永遠の命を手に入れた。そしてわたしは、ドクターと共にこの先もずっと研究を続けて行く特別な存在なのだと、そう思っていた。

それがまさかこんなことになるなんて…



何も返事ができないわたしに、再びドクターは強く問いかける。

「○○○…これを成功させれば、たとえテストタイプとはいえ、お前を造った意義も大いにある…お前がいるからこそ、この研究もあるのだ。無駄にしたくはない…そうは思わないか…?」

「…はい…おっしゃる通りです…」

どうしようも無く涙があふれてきた。

「まずはカプセルコーポレーションへ行け。あそこにタイムマシンがあるはずだ」

「タイムマシン…わかりました」



「うむ、では○○○…成功を祈るぞ」

言葉とは裏腹に、彼の表情はどこか寂しく見える。


ここで… お別れなの…?



「お前はいい娘だった…会えてよかったよ…次は過去で再会しよう」



そう言い残した後、火花が大きく散り爆発した。

ドクターゲロの頭はバラバラに砕けていった。




わたしの目の前には、あのドクターの姿は無く

小さなガラクタの破片が散らばっているだけ…





どのくらいだろうか。

暗闇の研究所の中で、わたしは独り座り続けていた。

静けさが物悲しい。
壊れた扉の向こうから差し込む陽の光だけが、何故か妙に優しく見えた。

- 3 -



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