Story:17 近くて遠くそれなのに近い-3-



どのくらい経っただろう。ふと我に返る。

しばらくわたしは立ち尽くしていた。



夜風が静かに流れる。

街の灯りなどとっくに遠退き、 ここにはもう何もない。上空にはただ独り…

わたし独りだった。



「今のわたしに居場所なんて…」



口元からふと言葉が漏れた。声が…震えていた。


頬に伝うものがあった。




その時__




「…居場所など、どこにある」




ふと聞こえたあの声…




「探そうとするほど…見つからないものだ」




小さく語りかけるあの低い声…



ゆっくりとわたしは振り返る。
月を背に、彼の紅い瞳が微かに光った。


彼は…… やはりそこにいた。



「この前は少し言い過ぎた。謝ろう」


彼は距離を縮め言った。思いがけず現れた彼に戸惑うわたしを見るなり話を続ける。

「この私が云わんとしている事に気付いたのなら…もういい」



彼は…

どうしてここにいるの?なぜまたわたしの前にいるの?


どうしていつでもわたしのそばにいるの……?


「…わたし…あなたのことまるで理解してなかったのに…」


どうして…


「お前はただ遺された意志に反せずここまでやってきただけだ。その信念さえ歪ませてしまったのは、誰であろうこの私なのだからな…」


ただ謝りに来たの…?それとも…


「過ぎたことは仕方ない。お前が私をどう思おうと…構わん」


そんな…そんなこと…


「そんなこと…言わないで…!」


セルが微かに反応する。

「わたしが苛立ってるのは、自分自身よ…まるで独りよがりでいい気になってたわたし自身なの…!」

表情を変えず、セルはわたしを見つめている。

「自分にとって何が全てか、それだけを考えてた…あなたという人格さえ無視してたなんて…!」

「…○○○」

「こんなわたしだから…結局独りになっても何も出来ないのよ…」

言葉が次第に詰まってしまう。

「いいえ出来ないんじゃない…これからどうしたらいいのか…もう…わからないの」

「○○○、辞めるんだ」

その台詞を聞きふと顔を上げた時だった。


「自虐的な言葉は嫌いでな…お前の口からも聞きたくない」


彼はもうそばまで来ている。
そして彼の右手がこちらへ向かうのを見たその瞬間だった。あの時の激しい感情で掴みかかったセルを思い出し、わたしは思わず身を構えてしまう。

すると、そんなわたしを見たセルの表情に、わたしの気持ちは途端に一変した。怒りでも哀しさでもない…迷いにも似た揺れる感情に、まるでほだされたかのように彼の瞳がわたしを映し出していた。


「…怖いのか」


向けられた視線に言葉が出ない。


「ならば…どうしたらいい」


静かに低い声が響く。


「どうしたら…お前に…」


しばし沈黙が訪れる。

が、その視線に耐えられず、わたしは慌てて顔を背けてしまう。それこそ本当に何も言葉が出なかった。なぜかわたしの脳裏には、優しさを見せたあの時の彼が一瞬よぎったのだから。

何だろう…
こんなにもわたし…

胸の奥が熱い…


うつむくまま沈黙をするわたしを不安に思ったのか、セルはわたしの名を呼んだ。

「…○○○」

「あなたなんて…怖くなんかないわ」

「ん…?」

「あなたは…いつだってわたしを戸惑わせるの…」


ふと口にした言葉…彼は今どんな表情をしているだろう。


「それは…どういう意味だ…?」

セルの問いにわたしは黙り込んだ。

「○○○…それは…」

「…聞きたいのはわたしのほうよ!!」

- 49 -



*前次#


ページ:

ストーリー:











小説TOPページへ

サイトトップページへ