どのくらい経っただろう。ふと我に返る。 しばらくわたしは立ち尽くしていた。 夜風が静かに流れる。 街の灯りなどとっくに遠退き、 ここにはもう何もない。上空にはただ独り… わたし独りだった。 「今のわたしに居場所なんて…」 口元からふと言葉が漏れた。声が…震えていた。 頬に伝うものがあった。 その時__ 「…居場所など、どこにある」 ふと聞こえたあの声… 「探そうとするほど…見つからないものだ」 小さく語りかけるあの低い声… ゆっくりとわたしは振り返る。 月を背に、彼の紅い瞳が微かに光った。 彼は…… やはりそこにいた。 「この前は少し言い過ぎた。謝ろう」 彼は距離を縮め言った。思いがけず現れた彼に戸惑うわたしを見るなり話を続ける。 「この私が云わんとしている事に気付いたのなら…もういい」 彼は… どうしてここにいるの?なぜまたわたしの前にいるの? どうしていつでもわたしのそばにいるの……? 「…わたし…あなたのことまるで理解してなかったのに…」 どうして… 「お前はただ遺された意志に反せずここまでやってきただけだ。その信念さえ歪ませてしまったのは、誰であろうこの私なのだからな…」 ただ謝りに来たの…?それとも… 「過ぎたことは仕方ない。お前が私をどう思おうと…構わん」 そんな…そんなこと… 「そんなこと…言わないで…!」 セルが微かに反応する。 「わたしが苛立ってるのは、自分自身よ…まるで独りよがりでいい気になってたわたし自身なの…!」 表情を変えず、セルはわたしを見つめている。 「自分にとって何が全てか、それだけを考えてた…あなたという人格さえ無視してたなんて…!」 「…○○○」 「こんなわたしだから…結局独りになっても何も出来ないのよ…」 言葉が次第に詰まってしまう。 「いいえ出来ないんじゃない…これからどうしたらいいのか…もう…わからないの」 「○○○、辞めるんだ」 その台詞を聞きふと顔を上げた時だった。 「自虐的な言葉は嫌いでな…お前の口からも聞きたくない」 彼はもうそばまで来ている。 そして彼の右手がこちらへ向かうのを見たその瞬間だった。あの時の激しい感情で掴みかかったセルを思い出し、わたしは思わず身を構えてしまう。 すると、そんなわたしを見たセルの表情に、わたしの気持ちは途端に一変した。怒りでも哀しさでもない…迷いにも似た揺れる感情に、まるでほだされたかのように彼の瞳がわたしを映し出していた。 「…怖いのか」 向けられた視線に言葉が出ない。 「ならば…どうしたらいい」 静かに低い声が響く。 「どうしたら…お前に…」 しばし沈黙が訪れる。 が、その視線に耐えられず、わたしは慌てて顔を背けてしまう。それこそ本当に何も言葉が出なかった。なぜかわたしの脳裏には、優しさを見せたあの時の彼が一瞬よぎったのだから。 何だろう… こんなにもわたし… 胸の奥が熱い… うつむくまま沈黙をするわたしを不安に思ったのか、セルはわたしの名を呼んだ。 「…○○○」 「あなたなんて…怖くなんかないわ」 「ん…?」 「あなたは…いつだってわたしを戸惑わせるの…」 ふと口にした言葉…彼は今どんな表情をしているだろう。 「それは…どういう意味だ…?」 セルの問いにわたしは黙り込んだ。 「○○○…それは…」 「…聞きたいのはわたしのほうよ!!」 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |