その夜、空き家に戻っていたわたしはひとり窓辺に持たれ、彼の言葉を振り返っていた。 セル自身の目指すべきところとは何なのか。ドクターの意志ではなく彼自身が望むべきもの… 彼は…セルは本当は何の為に造られたのだろうか。確かに今までのわたしは、ドクターにとって倒すべき相手があり、セルもその為に造られた人造人間のひとつだと理解していた。でも単純に孫悟空を倒す__それを現実のものにする為だけに造られたのだろうか… 何よりセルという彼ほどの大きな存在を持ってして生み出されたその意味が、今になって分からなくなっていた。 だとしても、セルはドクターの為に存在しているのだろうか。ドクターがいない今となっては、セル自身も疑問を抱いて当然なのかもしれない。 一方わたしはと言えば… 今まで信じる者がいてその人の為に生きてきた。それがあったからこそ、自分自身が何の為に存在しているのか…それを確認することもできた。 でも今はそれを失いかけている。 わたしは考えていた。今思えばきっと、ドクターと死別しこの地でセルと会ってから、わたしは既に自分にとって次の生きる道へと進み始めていたのだろう。でも…ドクターでも誰の為でもないのなら、わたしは何の為に生きているのか… やっぱり自分の為…? あの時のセルの台詞… 『自分の人生を自分の為に生きたらどうだ』 自分の為って… 自分の生きる目的とは何か、本当は何の為にここにいるのか… もしかしてセルも今までずっとそれを考えていたのだろうか。 ふっと、今日向かい合った時のセルの顔が脳裏をかすめた。 彼は…目の前にいると、不思議とどこか感情的な部分を見せる。わたしをきっと信用してくれているからなのだと思いつつも、本当にそれだけの理由なのかは…わたしには分からない。 「でも…どうして優しくできるの…」 思い巡らせる度にまた胸元が絞られるように痛い。 … __柔らかな光。 黄昏のあの日を思い出す。 すぐそばにいるのは…セルだった。 わたしに触れていたあの手… 離したくない。 本当は離したくなかったの… でも、どうして…? どうして行ってしまうの…? 彼が遠い。 彼が見えない… 見えない…何も… どこへ どこへ行ってしまったの…? セル… ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |