そんな闘いに興じる彼の様子とは裏腹に、リングの端からただただ見届けるしかないわたしは、そこはかとなく湧き上がる複雑な感情に包まれ始めていた。 もうわたしのような戦闘レベルでは到底追いつくこともないであろう、そんな領域に彼はいた。 出会った当初はまだまだエネルギーも小さく、わたしにも及ばないようなものだった。それがいつの間にか…気付けば随分とかけ離れた強さへと彼は進化していった。 それはどこか… 彼が遥か遠いところへと行ってしまったような… わたしにこれ以上出来ることなど何があるのだろうか。ただこうやって闘い続けるのを見守るしかないのだろうか。 『私が完全体としてどこまで通用するかその目で見届けろ』 いつの日だったか、セルがわたしにそんな言葉を告げた。この場に来て、なぜかそれを思い出している。 わたしにとって、その言葉はどのような意味を成すというのだろう。ようやくセルを信じてここまで来ることができたその先が、ただただ見届けるだけなど…わたしには、あまりに寂しい話だった。 もちろん孫悟空の仲間たちの様子を見る限り、ただ見届けるしかないとそう感じているのはわたしだけではないようだが、どこか心寂しさが湧いてくるのは…なぜだろう。 大切な心のよりどころであったドクターをも無くしたわたしにとって、唯一の存在である彼がとうとう孫悟空と戦っている。 そんな状況を目の前に、わたしは自分自身がここまで来たその役目も、次第に終わりを迎えているような気がした。 何かもっと彼に出来ることがあるのなら… まだわたしは、彼のそばに…… 「みんなリングから離れろーー!!」 突然の叫び声に、ふと我に返った。 孫悟空がそう叫んだと思いきや__上空から凄まじい爆風が降り注ぎ、地面もろともリングを大きく吹き飛ばした。 「くっ…!」 思わずわたしもその場から飛び立つ。ひとつ間違えれば、巻き添えになりそうな勢いだ。 わたしはとっさにセルのいる方向を確認した。彼は上空にたたずみ、余裕の笑みを浮かべている。彼の真下に現れたのは… 巨大な空洞だ。 「これで大地全てがリングになった」 セルのそのセリフが、このゲームそのものを物語っていた。 ___戦いはまだ始まったばかりだった。 ページ: ストーリー: 小説TOPページへ サイトトップページへ |