Story:22 静かなる忠告-2-



16号と相対するわたしを背に、その先ではすでにセルと孫悟空の戦闘が再び繰り広げられている。

その最中わたしは、目の前にいるドクターに造られたと話していたこの人造人間と、改めてここで互いを探り合う状況となった。


「あなた…わたしに何を求めているの…?むしろあなたのような思慮深い人造人間が、この場に及んでどんなことを企だてているのか聞いてみたいわ」

16号は目の前にいるわたしから戦うセルたちへと視線を移し、しばし沈黙が訪れる。あのふたりの激しくぶつかり合う轟音とともに、次々と身を揺るがすような空気が全身に伝わってきた。


16号は再び静かに話を始めた。

「セルが完全体になってしまった今や、簡単に事が済むほどの状況ではなくなってしまった。だが何もかもが手遅れになる前に、やるべきことをするしかないだろう…」

「つまりは、そのわずかな可能性があるならと、こうしてあなたはわたしに説得しているということなのね」

「……そうだな…」

「だがそれはあくまで可能性があればというだけの話だ。オレが本当に聞きたいのはそういうことではない。お前の行動はオレには不可解だからだ」

「不可解……?」

この16号のことだ。彼の言葉の端々から伝わるこの感覚は…彼はわたしから何かを見出そうとしているのだろうか。


「セルは、本当は何を目的にこの世に産み出されたのか、お前は知っているのか」


なぜか話を切り替えたようにも見える16号が気になったが、わたしはそのまま素直に答えた。

「ドクターから何か聞いたことはないかしら。セルはドクターが遺した最後の…最も重要な研究だった。孫悟空を倒すことはもちろん、ドクター自身はもっと大きな望みと志しがあったはずだわ。それだけこの研究に打ち込んでいたから。わたしが存在するのは、その研究を先駆けたもの…そしてセルを成功させるためでもあったし、ドクターが亡くなった今となっては、わたしがそれを継ぐ責任があると思っていたわ。使命のようなものよ…」

「使命…?」

16号は反応する。

対するわたしは再び過去を思い出していた。


突然何の心づもりもなく消え去ったドクターの元から離れここに来た道のりは、近いようで今やずっと遠いもののようにも思える。さまざまな出来ごとに遭遇するにつれ、次第にその気持ちも形を少しずつ変えながら、まるでわたしに何度も確かめるように引いては打ちつける波のようだった。

そんな波に揉まれつつもこうして辿り着いた今の状況も…もちろん目的を果たすため、それはドクターから受けた使命だから。

でも…


「それだけの理由じゃない。わたしは…
ドクターを…大切な人を守れなかったから…それを悔やんでいたからこそ今この次元にいる」

「まさかお前も別の次元から来たのか…?」

「あなたにはまだ伝えてなかったわね。もとより果たすべき目的があってこの次元に来たわ。わたしがやるべきことはもうここにしかない、そう思った…でも、やっぱり簡単なことではなかった」

16号は、そのまま静かにわたしの話に耳を傾けている。

「ここでは、わたしの予想とはかけ離れたことばかりが起こるものだから」


そう…ここでセルと出会ったったことも…


16号へと視線を移し、わたしは付け加えた。
「そしてあなたに出くわしたこともね。ここまでいろいろと邪魔が現れるとは予想もしてなかったわ」

「…それでもお前は、ずっと何かに必死になっていた。オレにはそう見えた」

なぜだろうか、そう言葉を返す16号の目は、敵対する者とはどこか違って見えた。


必死だなんて…

ずっと自分自身に構う余裕などもないわたしだった。もしわたし自身を深く考えたのなら…わたしは今のわたしでいられるのだろうか。


もしセルにさえも出会っていなかったなら、わたしは…


「彼がいなければわたしは…違う…わたしは…
わたしのようなテストタイプなど何のために存在しているのか…
せめてここにいる意味を見出したい、彼の役に立ちたい…」

「セルはわたしの予想を遥かに超えていたわ。
彼は…単なる凄まじい能力を秘めた生命体じゃない…ドクターから造り出された人造人間であったとしても。わたしやあなただってそうよ、そして彼も…何の心も持たない者ではないでしょう…?」

「セルも今ここで彼自身の意思で戦ってる。彼自身の存在をここで確かめるために…
誰がそんな邪魔などできるのか…

彼の存在は、独り遺されたわたしにとって最後の希望なの。だからこそ彼はわたしが守るしかない…
大切なものを守るため…誰が頼まずともそう決めたのよ」

「もしかしたらわたし自身のためかもしれない。失うのが怖いからかもしれない…たった独りになることが…」


ふと、あの夕陽のやわらかな光とともに、わたしのそばにいたセルを思い出していた。
あの時の彼のまなざしはまるで、遥か夢の奥に深く沈んでいくような余韻を漂わせていた。


『お前は…どうして私の前に現れたんだ…?』


わからない…
わたしもそれが知りたい。

まだあの時のおだやかな時間を忘れてもいないし、この先も続いてほしい…彼を信じているから。


「どんなものであろうと、わたしはわたし自身のために信じていたいものがある。くだらない己の勝手だなんて言われても…わたしは失いたくない…それだけよ」


わたしは、まるでわたしにそう言い聞かせるように…つぶやくように自然と言葉がこぼれていた。

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