皆と同じことしててもいいネタはひろえない!

雄英。そこはヒーローとヒーローの卵がより良いヒーローを造るという一つの目的に集まる場所。だが授業内容等はセキュリティ万全の為に未知に包まれている。
(全然近寄れないじゃない。)
早くに張り込みに来たのに既に何組か同業者が陣取っていた。オールマイトはどこから登場するのだろう。あの派手な体格、清々しい笑顔と共に一言コメントはくれるだろうか。


「でもやっぱり、表からは来ないんじゃないかしら、マスコミ対策のために」


通りすがりの野次馬が呟いた。
確かにそれは一理ある。私たちは一言でもというがその延長線を求めてしまうのだ、職業柄。職員ともなればそちらを優先するに違いない、ヒーローとして私達に対応してくれる可能性は低いかもしれない。皆と同じことしててもいいネタはひろえない!

「裏に回るわよ」

そう同じクルーに告げ立派な校門を後にした。考えに考え抜いて、出した答えは私ひとりで張り込む事だった。テープレコーダーを片手に高校の裏側近くの道路横ベンチに腰掛けた。
雄英とは本当に馬鹿でかい校舎だ。しかも裏側もご丁寧に大きな壁で囲まれていた。
寒っ、、。そう独り言を呟きながらジャケットにくるまる。今は1月。オールマイトが就任するのは新学期から(情報によると)なので、彼が高校に姿を現す確率は高いとふんでここ数日張っているのだがなかなか会えない。
凍えそうになりながら腰に貼ったカイロを頼りにしていると、ひょろひょろとした長身の大男が通りすがった。

「....あの!」
私のかけ声に振り向いてくれたその人は不健康そうなガリガリさんだった。

「私?」

己を人差し指でさしながら首をかしげたその人のもとにかけよると、更にこけた頬に目がいってしまった。

「この辺の方ですか?私、こういう者でして、新学期からあのオールマイトが教師として就任すると聞きました。少しでも情報が欲しいんです!何かご存知ではないですか??」

そう告げ自分の名刺を半ば押し付けるカタチでガリガリさんに渡した。彼は少し困ったような顔をしてこう答えた。

「すまない。私から答えられるような事は何もないんだ」

碧い瞳が印象的な、優しい笑顔だった。


「...きみ?...お嬢さん?...Hey! 」
ガリガリさんは大きな手のひらをブンブン私の前で振っていた。
あ、と私は我にかえる。
とても綺麗な瞳に見入ってしまい言葉を失ってしまっていた。こんなこと初めて。

「寒いのに大変だね。風邪、ひかないように。では私はこれで」

綺麗な瞳のガリガリさんは私の目の前から居なくなった。とってもいい香りを残して。