(..........もうお昼よ?)
はぁっとため息をつくと白くなった。
結果オールマイトは現れなかった。
それどころか人が通ったのも散歩中のおじさん、と、ひょろひょろのガリガリさんだけだった。午前中捕まらなければ、夕方までの間は居てもあまり意味がない。彼もきっと働いているのだ。私と同じように。夕方の退勤時間をまでどうしようか悩んでいると、聞き覚えのある低い声がふってきた。
「あ、まだいた。お嬢さんもがんばるね。これ、差し入れ。」
朝会ったガリガリさんだった。
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「え!ご飯ないの?」
そうなんです、と語尾が小さくなりながら私は答えた。勢い余ってお家を出て、張り込みの事で頭がいっぱいだった私はお昼ご飯を買い忘れていた。
一人暮らし、お弁当なんて作る余裕のない私は通勤途中でコンビニ購入が常だった。それを忘れるとは。
ガリガリさんはあったかいコーヒーをくれた。この辺の方らしくこの気温の中張り込んでる私が気にかかって持ってきてくれたらしい。張り込み中は時々こういった優しい人に巡り会えることがある。前も違う公園に張り込んでいた際に近くのおばあちゃんがお饅頭くれたことあったっけ。
「これ良かったらあげるよ。お口に合うかわからないけど」
そうガリガリさんは私にうさぎ柄の可愛いお弁当包をさしだしてきた。
「いえ!そんな!あなたのお弁当なくなっちゃうじゃありませんか。」
流石に今までにお弁当を頂いた事はなかった。そもそも初対面、まあ朝一度会っているから二回目ではあるが見ず知らずの他人にそこまでしてくれるなんて。
「私さ、ちょっと前に胃袋無くしちゃって。一度に沢山食べられないんだ。だから私よりか君に食べてもらった方がいい。」
まるでボールペンを無くしたかのように胃袋無くしちゃってと笑う彼はお弁当の包を広げながら私に差し出した。
「それに言うだろ?余計なお世話ってのはヒーローの本質だって」
胃袋をなくす、それはデリケートな部分ではないかと思い突っ込まないでおいた。口ぶりから彼もヒーローだったのかも知れない。
「はぁ、、あ、だからそんなにスレンダーなんですね。」
彼が出してきたお弁当は色彩豊かでとても美味しそうだった。奥さんに作ってもらったのだろうか。ガリガリさんは見たところ40代くらい?もう少し若くも見えるが。伴侶がいてもおかしくない歳なのは確かだ。
「おいしい!すみません、頂いてばかりで。久しぶりに手料理食べました。奥さん、お料理お上手ですね。」
あっという間に平らげてしまった。おいしいコーヒーにおいしいお弁当。あぁ、だから私今日星座占い一位だったのね。
「ああ、これ、私の手作り」
少し照れながらガリガリさんは言った。奥さんはいないんだ、ほら。と左手の薬指を見せてきた。
ガリガリさん、料理上手過ぎやしないか。私は軽く自分の自炊力のなさに落ち込んだ。
「君はオールマイトを追いかけているの?」
ガラッと話題をかえ彼は私に聞いてきた。
「ええ。彼は秘密が多いですからね。ネタをつかむために必死です。雄英にずっと張り込んでれば何か掴めると思ったんだけどなぁー。」
私は彼とベンチに掛けながら脚をぶらぶらさせた。やる気だけは誰にも負けないのに。結果がでない。
「そうなんだ。でも程々にしないと今日みたいな日は風邪ひいちゃうよ。お嬢さん、女の子なんだから。」
久しぶりに女の子だなんて言われたなぁなんてくすぐったさを覚え頬が熱くなった。
「いえ、根性です!明日も来ます!」
私は右手を握りしめ鼻息強めに言い張った。そう。根性だ。今日も夕方まで粘ろう!そう勝手に私の中で決意した時隣の彼はこう言った。
「君は何を彼から聞きたいんだい?」
まるで彼を深く知る友人のような言い方だった。
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心もお腹もあったまって、私はまだベンチに腰掛けていた。一日中こんな人通りの少ない場所に居続けるなんて変わったやつだと自分でも思う。
でも。ガリガリさんは私に言った。
「今日なら夕方オールマイトはここを通ると思うよ。」
なんでもガリガリさんは雄英で働いているらしくオールマイトの出没情報を教えてくれたのだ。今日会ったばかりだ。信憑性はともあれあんなに親切にしてくれたんだもの。本当のはず。
私はぐっと拳を握りしめ、更に待った。