2人の共通点

新学期から雄英に務めることになった。その為手続きうんぬんでなんども校舎に通っていた。トゥルーフォームで行くためオールマイトとバレることは無い。だが、念のために裏側から歩いて行っていた。こちら側に張り込んでるマスコミはまず居ない。そう、今日までは。


「私?」

呼び止められ振り返ると寒い中ダウンジャケットを着込み、アッシュカラーの髪の毛をポニーテールにした女性が頬を赤くさせながらこちらに走ってきた。
(マスコミか、、、)


今の私の姿では気づくはずもない。通りすがりの普通の人である私にコメントを求めてきただけだった。


なんでだろう。思えば一目見た時からこの人の事が気になってしまっていたのかもしれない。必要ないのにお昼まで足を運んで。コーヒーも持参して。彼女の負けん気に惹かれてしまったのか。
そう、それは少し緑谷少年に似たものがあるように感じたのかもしれない。


夕方、マッスルフォームで彼女の前に私は登場した。いつもなら絶対にこんな事しないのに、浮かれちゃったかなぁ。
自嘲気味に笑い彼女のもとにかけよる。


「あ、わわわわ!オールマイトさん!!」

彼女は起立して目をキラキラさせながらいくつかの質問をしてきた。大事な事はぼかしてだが、満足そうにテープレコーダーに私の声を録音していた。
そう。私は秘密は多いが嘘はつかない。

「待ってたかいがありました!本当に会えるなんて。あのガリガリさんはお友達ですか?是非お礼を言いたいのにお名前も聞き忘れてしまいました、、。」

ガリガリさんって、それ私の事?まあガリガリだけどさ。

「あぁ。彼は古い友人でね。明日もここを同じ時間に通ると思うよ。ここの職員だからね。」

何を期待しているんだオールマイト。彼女にもう1度会えるタイミングを作りそこで別れた。彼女が根掘り葉掘り聞いてくる私の'あまり得意でない部類'のマスコミであれば、丁重にお断りしていただろう。彼女は以前出演したそう、情熱大陸のようなコンセプトの番組を持っているらしく、私の話を聞きたかったそうだ。

「私の今日の星座占い1位だったんです!だから親切なガリガリさんにもオールマイトさんにも会えたんだろうなぁ。ふふっ」

最後のそう言った彼女の表情があまりにも可愛くて頭に残っていた。


(ああ、いかんいかん、そういう感情は持ってはいかんのだオールマイト)

私は頭をブンブンと横に振り帰路についた。


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「おはよう」


心地の良い低いトーンで声をかけてきたのは親切なガリガリさん。

「おはようございます!昨日は本当にありがとうございます!あなたのおかげでオールマイトに会えました!お話もきけて私超ラッキーです!」

お礼と言っては何なんですが、、
そう言いながら私は缶コーヒーを出した。ブラックと微糖。私はどちらでも飲めるのでガリガリさんが飲めない方を飲もうと思って2つ買ってきた。

「ありがとう。ではブラックを頂くよ。」

そう彼が私の手の中にあるブラックコーヒーを取る時にふわっと香った昨日の香り。いい香りだなぁ。

「あの、連絡先を教えていただけないでしょうか?」

私がそう告げると彼はブハっとコーヒーを吐き出しそうになっていた。


「いや、あの、変な意味ではなくて、先輩から人脈を広くもてと言われてまして、その。。。」

彼が赤くなるので私まで頬が熱くなってしまった。マスコミ、TV関係は人脈がとても大事。そこから仕事に繋がることの方が多いと先輩に教えられてきた。

「なるほどね、でも君、私の名前もまだ知らないじゃないか」

あ!そうだった。昨日は私が半ば無理やり名刺を渡しただけだった。名前を聞くとガリガリさんはマイト…マイティーだよ。と名乗った。

「今日も張り込むの?」
「いいえ、今日はマイティーさんにお礼が言いたくて待ってました。」

昨日のテープレコーダーのおかげで今朝出社した時はとても褒められたのだ。
よくやったと。だがこの手柄はマイティーさんのおかげでしかない。

「マイティーさんは....」

そう言いかけた時に、彼はそそくさと立ち上がり校舎に向かっていった。もう時間だから、だそうだ。
そう、またいい香りを残して。




私はしばらくぼーっとしていたが、スマホを開きマイティーさんに連絡をした。先程はありがとうございます。と。

(またお話をお聞きしたいのであのベンチで明日もお待ちしてもいいですか???)

送ったそばからすぐに既読がつき返信が帰ってきた。
「明日は用事があって学校には来ないんだ。今日のお昼は空いてるかい?ランチでもどう?」

彼が連れていってくれたのは、お洒落なイタリアン。オープンテラスがあり西海岸を思わせる様なお店だった。

「マイティーさん、いいとこ知ってますね。いつも女性をここに連れてきてるんでしょう。」

マイティーさんはよく見ればガリガリだけど、色気がある。スーツも上物そうだし、時計も高そう。

「そんなことないよ。HAHAHA」

誤魔化されたような気がして私の中で胸の奥が少しだけ苦しくなった。テーブルの近くには暖房用の器具が置かれ、ひざ掛けやクッションもある。

「マイティーさんは雄英で何のお仕事をされているのですか?」

私は....と少し詰まった後に事務関係かな。と彼は答えた。オールマイトととの関係をもっと聞きたかったが、最初からガツガツ聞けば次は会ってもらえなくなる。人脈。人徳。大事にするのよなまえ。

「みょうじさんは映画は好きかい?」

はっと我に帰ると彼はそう問いかけた。意外にも私と彼の共通点は沢山あった。映画が好き、カフェがすき、紅茶が好き、お酒もあまり飲めないけど好き。

「そうそう、学生の頃はDVDをこの棚端から順番にレンタルして観る!とかやりました。」

オールマイトとマイティーさんの関係性を沢山聞きたかったはずなのに、気づけばお互いの話で盛り上がったいた。

2時間、いや3時間はいただろうか。そろそろ次の予定があるから、とマイティーさんはお会計をと、定員さんを呼んだ。私が財布を出そうとすると、
「ここは私に出させてくれ。私が誘ったんだ。」
そう言い払わせてくれなかった。


「では、今日はご馳走様でした。またお時間ある時にお話聞かせてください。」

私達はイタリアンの前で別れ際の言葉を交わしていた。
「あぁ。楽しかったよ。久しぶりに何も考えずに好きなことだけ話せた。またご飯行こう。」

ニコニコしている彼は乙女のようでなんだか可愛かった。
寒空の中、私達は息を白くしながら別れた。