私の身体は、
どうしてしまったのだろう。
ずっと近づきたくて手を伸ばした太陽は、あったかくて。
触れたその場所から、熱く、あつく−−−−。



「おはようございます」
「おはよう」


昨晩の出来事がまるで夢だったかのようだ。私は目の前の神さまと一夜を共にした。神さまは眠たそうに目を擦っていた。
彼が動く度にクリーム色のシーツが揺れる。カーテンの隙間から朝日がこぼれ、八木先生の黄金の髪の毛をキラキラと反射させる。逆光に写る先生は神々しくて、やたらと神さまらしくみえた。


「かみさまみたい」
「ん?」
「私、先生のこと太陽神みたいだなって思っていたんです。」
「神さまだなんて恐れ多いよ、私はちっぽけな人間さ」



先生は私を優しく包み込みきゅっと肩を寄せた。八木先生はたまに妙にセンチメンタルだ。抱えているものが大きすぎるのだ。彼の身体はそら他人に比べると大きい。しかし、彼の命はひとつだ。望んでなったとはいえヒーローだって人間なのだ。




「ねぇ、八木先生」
「なんだい?」
「生きる事にもっと執着してください」
「..........そんなの、言われたの初めてだよ」
「でしょうね、ふふ」



彼はNo.1ヒーローだ。
昨日今日で分かったことがある。彼はいつ死んでも構わないと思っているのだ。ヒーローとしての責務を全うし、死することがゴールであるのだ。


「もっと、生きようとして下さい」



そんなの不公平だ。
彼だって人間だ。ヒーローとして、一人の人間として、生きなければならない。


「努力してみるよ」




彼は優しく私にキスをした。




「さぁ、レウくんも1度帰らないと支度できないだろ?送るよ。」


昨日の夜みたく名前で呼んでくれないのね。その一言をぐっと飲み込んだ。八木先生は私を丁寧に抱き上げ、私のマンションまで送り届けてくれた。



「じゃあ、また後で」
「はい」




とんでもない色香を残して彼は去っていった。



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「消さん!Wake Up!!」
「んあ?」


今日から月曜日。
私は八木先生に送ってもらい、身支度を整えた。消さんはいつも通りベッドに張り付いている。寝袋でなくベッドで寝てるだけまだましか。



「ほら早く起きないと朝ごはん食べる時間なくなりますよ!」
「んー」


消さんは左手を挙げて返事をした。これは起きないパターンだ。私はため息をついて彼の左手を掴み引っ張ろうと力を込めた。


「いい加減に起きて...って..!」



予想外の力で反対方向に引っ張られ私はなす術もなく消さんの胸につっぷした。思ってもみなかった展開に私の頭はくらくらしていた。


「なにするんですか、もう」
「5分、このままで待て」
「待てって私は犬か」
「俺は猫派だ」
「......」



私は言葉を失った。なぜなら消さんの腕に包まれたからだ。消さんに抱きしめられるのは、いつぶりだろう。高校生?中学生?泣きじゃくる私をいつも抱きしめて慰めてくれた。お兄ちゃんのように。



(いい匂い)



消さんって汚らしい格好に見えるけど、意外と綺麗好きだったりする。いつだっていい香りがするし髪の毛だってシャンプーの香りが....



「....へ?」



私が寝ぼけてさえいなければ、今唇に何か感触があったような気がする。口元に手を添え瞬きを数回した。頭よ、冴えろ、今のはきっと何かの間違いよ。



「...遅刻すんぞ」
「..はい」



あれから二人とも無言で通勤した。今日は朝から職員会議なのでいつもより教員の集まりが早い。自分のデスクにつき頭の中で言葉にならない煙をぐるぐるとかき回しているとガラッと前方の扉があいた。



「おはよう!今日は皆に紹介する新米教師がいるのさ!」



校長先生が勢いよく声を上げ後から入ってきたのは昨夜私を何度も快楽に誘ったあの人だった。



「初めまして。何度かお会いしている方もいらっしゃると思いますが、私は八木俊典、ヒーロー名オールマイトといいます。」
「ちょっとナイーブな内容だったから発表が遅れちゃったのさ!まあ、見てもらう方が早いよね!」



その後目の当たりにしたのは、八木先生がオールマイトにパンプアップした姿、そして過去のオールフォーワンとの戦いについての話。私は業務上いち早く知っていたが、それはトップシークレットとされていた。



「教師として新米でご迷惑をおかけするかと思いますが、何卒ご指導よろしくお願い致します。」


2メートルを超える長身は小さくなるまでお辞儀をした。そして顔を上げ、目が合った私に照れくさそうにほほ笑みかけた。




(私と八木先生って付き合ってるに入るのかしら)



そういえば今後について何も話してはいない。
一夜を共にした中ではあるが、恋人になろうとは一言も言われてもいない。しかしそれを急かすのもどうなのだろうか。



「よろしくね」


八木先生は私の前のデスクに座った。よろしくお願いします、と言葉を発しようとしたところ、頭に軽い刺激を感じた。消さんが私の頭をわしゃわしゃと撫でていた。


「ちょっと、髪の毛ぐしゃぐしゃになるじゃないですか!」
「別にいいだろ、少なくとも俺はそれでもいい」
「はぁ?」




心なしか、目の前で消さんと八木先生の間に火花が見えたような、まさかね。私は取り合いになるような女ではない。私は2人にひらひらと手を振りぐしゃぐしゃにされた髪の毛を直しにお手洗いに向かった。




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「ライバル、なのかな?」
「オールマイトさんとは馬が合う気がしませんね」
「ほほぅ。手厳しいね」




勿論、ふたりの会話は私には届かない。




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