従者であるジャミルに加え、護衛としてカリムにくっついてきたナマエは獣人族でありながら当然の如くスカラビアへ入寮が決まった。

獣人族がサバナクロー以外に入寮することは稀にあるが、あまりにも素早くあっさりと魂の選定が行われたため、飼い犬を可愛がるカリムのためにアジーム家が裏で手を回したのだとまことしやかに囁かれている。

当の本人はそんな噂はどこ吹く風とばかりに、相も変わらず主人の後ろをちょろちょろとひっついて回っていた。

そんな彼を慕う物好きな後輩がひとり。


四六時中カリムと行動を共にしているように見えるナマエだが、ごくたまに一人になる時もある。

結論から言えばそれは補習。
カリムと同じく学校という組織に属するナマエは嫌でも学生としての責務を全うしなければならない。しかし、主人を己の補習なんぞに付き合わせるなど言語道断。
だから大大大嫌いな魔法史の補習もしぶしぶ受けているのだ。
怒らせると酷い目にあう従者に決してサボるなと釘を刺されたことが、大人しく受講した最たる理由なのだが。

「ナマエ先輩、お疲れさまっス」

「…ん」

不機嫌を隠そうともしない彼に臆することなく話しかける男は、ナマエと同様狼の獣人族であるジャック・ハウルだ。
狼というところに親近感を覚えたようで、唯一彼に懐く後輩だった。

「今日部活休みなんで、またトレーニングに付き合ってくれませんか?」

「…………狩り?」

「ガッコで何を狩るんスか…」

「人間?」

「お願いですからやめて下さい!」

胡乱げにジャックを見据えるものの同族の彼には多少心を寄せることもあるらしい。
しばらく逡巡した後、ナマエはゆっくり頷いた。



陽も傾いた運動場で狼の遠吠えがひとつ。

西陽を浴びて悠々と立つ黒狼の姿に、ジャックはどうしようもなく魅せられていた。
黄金の瞳が自分を射抜き、今にも喉元に牙を突き立て腑を引き摺り出そうと舌舐めずりしている。
その堂々とした佇まいに、これがナマエ本来の姿なのだとはっきり理解できた。

「俺だって…」

あんな狼になれる。

二の句を告がぬまま輝く銀狼に変身し、一瞬でも判断を誤れば殺されかねない威圧を受けながらナマエと対峙する。
眼前の強大な相手を前にして、ジャックの心はまさに沸き立ち踊っていた。

二匹の獰猛な狼が牙を剥いた。

「マーーーベラス!!!!」

「!?」




戻る

トップ