ナマエが最も幸せを感じる瞬間。
カリムと散歩に出かけるとき。
カリムを乗せて走るとき。
カリムに頭を撫でられるとき。
カリムと一緒に眠るとき。
カリムに始まりカリムに終わる。
カリム以上の存在はいないし、この先もずっと現れない。
大好きなカリムを傷つけるものを徹底的に嫌悪し、そして絶対に許さなかった。
心優しく善良な主人を害するならば、死を以って償うべきだ。
手元の端末から聞き慣れた声が呪詛を吐いている。この世の何よりも大切な主人へ向けて。
あともう少しでオンボロ寮のヤツらが寮生を焚きつけて、カリムを追い出してくれそうだったのに。
俺の手を汚さずにカリムを寮長の座から引きずり下ろすために、一体どれだけ面倒な下準備をしてきたと思ってるんだ。
見知った顔を歪めて悪意を曝け出す姿を目にし、頭を鈍器で殴られたような衝撃を覚えた。
そしてやや時を置いて、か細く震えた主人の声が耳に入った。今にも泣きそうな、消え入りそうな、とてもとても痛ましい声。
太陽のように暖かく、いつも自分を励ましてくれた大好きな主人が、罵倒され拒絶され。
視界がぐにゃりと歪んで酷い耳鳴りがした。
俺はな…物心ついた時から、お前のそういう能天気でお人好しで馬鹿なところが……
違う。ご主人さまは、俺の命を救ってくれた大切な恩人なんだ。あの方の慈悲があったから、いま俺はこうして生きていられるんだ。
こっちの苦労も知らないでヘラヘラしやがって!
違う。ご主人さまは、いつだって俺なんかのために心を砕いてくださった。
苦労を知らないだなんて、そんなことをよくも。
俺はな、お前さえいなければと毎日毎日願い続けてきた。
ああやめろ、やめてくれ!
なんて酷い、どうしてそんな、お前が、よりにもよってお前が、駄目だ、ご主人さま、聞かないで。
泣いてしまう。大好きな大好きなご主人さまが、心を痛めておられる。
目まぐるしく進む展開についていけず思わず端末を取り落とす。
ちょうど開き直った従者の手によって、ご主人さまが砂漠の果てへ吹き飛ばされたところだった。
幼少の頃より時を同じくした少年を、そのとき初めて殺してしまおうと誓った。
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