あの日以来ストッパーが機能しなくなったというかタガが外れたというか、すっかり警戒を無くしたキラークイーンはナマエに対して以前にも増し甘えたになってしまった。
癪に障る。いけすかない。不愉快だ。
これじゃあまるで、本心では私がナマエに甘えたいと望んでいるようではないか。
天地がひっくり返ってもあり得んがな。くだらない。

厚かましくも顔を出し続けるナマエにやれ手を握れだの頭を撫でろだのと。
私は滑らかな美しい手を愛撫することは好きだが、骨張った男の手なぞごつごつと不恰好で一等嫌いだ。
スタンドとスタンド使いの好悪が一致しないというのも実におかしな話だが。


「お、おい、見ろ!キラークイーンが膝に頭を乗せたぞ!これは夢か!!夢なのか!?」

「永眠させてやろうか?」

大袈裟なまでに歓喜に打ち震えるナマエの膝には寝そべったキラークイーンがちょこんと頭をのせている。
本来私の膝にのせるべきところを、だ。

「なんて麗しくも愛らしいのだろう…高貴な女王が束の間見せる幼い少女のような面影…は、ここが理想郷、いやエデンか………」

「ゲヘナまで堕落したらどうだ」

ナマエの手がキラークイーンの頬を撫でるたび私の頬のあたりもなんだかこそばゆくなる。
鬱陶しいことこの上ないが、無理にやめさせようとすると事もあろうにこの私を威嚇するのだ。
キラークイーンの開ききった瞳孔に射抜くように見つめられると、いかな自身のスタンドとはいえ背筋が寒くなる思いだ。

…それにしても随分気持ちよさそうな顔をしているな、お前は。
一瞬テレビに気を取られた(子猫の映像が流れていた)ナマエが撫でる手を止めるとすかさずかまえと指図して。奴は当然文句も言わずに恭しく従うわけで。
その従順ぶりにもっと撫でろと催促し、やがて満足すると安心したように目を瞑る。

はっきり言ってお前のそんな体たらくぶりは見たくなかったがな。

「…気が済んだなら早く帰りたまえ。私は明日も仕事なんだ」

「ちょっとだけ我儘なところも君の魅力さ…」

「聞けと言うのに」

「………うん?へえ、そう…」

のそりと体を起こしたキラークイーンがナマエにちらと目配せすれば、それだけで一から十まで察したらしい。
ナマエはいきなり私に向かって鷹揚に手を広げた。

「…何の真似だ?」

「なにって、キラークイーンが…あんたも構ってやれってさ。俺も不本意だがね」

「帰れ!」




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