君と僕はすっかり意気投合しましたね。
僕たちはふたりして口数が少なめでしたが、とにかく共にする空間が心地よかったのです。
なんとはなしに、誰もいない廃屋で過ごす時間が増えました。
あの頃僕はどこにも居場所がありませんでしたから、そのせいもあったのではないかと思います。

「ぼく、はるのっていうの。きみは?」

「無い」

「へ」

「名前。無い」

「…そっか」

名前が無いひとなんているんだな、と素直に納得しました。疑問にも思いませんでした。


こんなことがあった、あんなことがあった。
いつも話題を提供するのは僕でした。君は興味がなさそうに聞き流してばかり。
僕も特別明るい少年時代を過ごしたわけではなく、面白い小話のひとつもできなかったものですから。

電灯もない薄暗い屋内で灯りになるものといえば、割れた窓や壁の隙間から射し込む夕陽とあのオーロラだけ。
あれは辺りが暗くなればなるほど綺麗に光を帯びるでしょう。僕はその過程が何よりも好きだった。

そう、それから、君の足元ではよく虫や鼠や鳥が死んでいました。
腹をきれいに齧られたようなのもあれば、節足がばらばらと散らばっているだけのもありました。なんの外傷もなくころりと転がっているのもおりました。

「こいつ、腹が空きすぎると俺を喰うんだ」

ぽつり、と。君は仕方ないやつだろと小さく笑いながら呟きました。意味が理解できませんでした。
そこに負の感情は全く無く、致し方なく幼子の悪戯を叱るような響きに、僕は更にわからなくなりました。
だから「僕、ごはんもってないや」とやや見当違いな言葉を返したのです。

君の周囲には、オーロラの輝き以外灰色しかなくて。綺麗な色彩に彩られている筈なのになぜだかひどく悲しそうで。
慣れないことなんてよせばいいのに、幼い僕は気を遣ってしまって。

無意識にスタンドを発動させていたのでしょう。
足元のドブネズミの死体から小さな花が咲きました。
はたから見れば取るに足りない、むしろ汚らわしい光景に、それでも珍しく君が目を瞠ったから、僕は嬉しくなりました。
僕はただ、君に喜んで欲しかった。綺麗で素敵なものを見せたかった。

「…これ。おまえがやったの?」

「…わかんない」

なんだよそれ、と目を細めて。
ありがとう、と言ってくれたのです。

君とはそれっきり会えなくなってしまいました。




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