幾たびもあの廃屋に通って、名前すら持たない君を待ち続けて、とうとう建物が取り壊されてしまって。

どうして、だとか、どこにいったの、だとか。
聞いても誰も答えられませんから、口にはしませんでした。
ただ折角完成したパズルのピースが欠けて、そのままなくしてしまったように、僕の心の中のなにかが欠落した感覚があって。
それがなんなのか、今も探しているのです。

あれから随分経ちました。

僕の声色は低くなり、髪も金色に染まり、最早かつての姿はありません。
無口で無愛想だった子供が、今やギャングに属していると知ったら君はどんな顔をするだろう。
…やっぱり、興味なさそうに嘆息するんでしょうね。

今になって考えてみれば、あの時君が姿を消した理由がなんとなくわかる気がします。
足元に転がっていた死体は例のオーロラの特性によるもの。きっと、あれは生きるために生物を殺すもの。
あまつさえ自分すら捕食の対象とするような物騒なものを抱えて、行き場なんてどこにも無いのに。
生命を生み出してしまった僕からあれを遠ざけようとしたのでしょう。
僕があの時花を咲かせていなければ。
たらればの話なんて考えるだけ無駄なのに、ふとした瞬間に君を思い出しては思考を巡らせてしまう。

先日雨上がりの軒先で、遠くの空に七色の輝きを見ました。


僕は君への手紙を海に流し続けます。不確実にも程がありますけれど、君はほかに方法を残して行ってくれなかったから。

僕はいま、ジョルノと呼ばれています。
子供の頃はイタリア語に不慣れでしたが、もう会話も読み書きも問題ありません。
ですので、君ともっといろいろなことをしゃべってみたいと思っているのです。あの時言えなかったこと、聞けなかったこと、たくさん。

もう一度でいいから君に会いたい。
いまどこにいるのですか。どんな姿をしていますか。名前は…ほんとうは、なんていうのですか。




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