あの後どうなったのか?そんなもの俺が聞きたい。

帰宅時にゴミ捨て場のポリバケツからヤクザが飛び出してくることもなければ、家の中で王族よろしく踏ん反り返っていたわけでもなかった。

留守録も相変わらず静かなもので、物騒なチンピラ警察官が辺りをうろつくこともなかった。

いよいよ以って何がしたかったのか、マジで謎だ。



今日は仕事が休みである。
図書館に本を返しに行って、小洒落た喫茶店でお茶をして、近所の遊歩道をぐるりと散歩して。
日が沈む頃になると、スーパーで夕食の材料を買ってから帰路につく。

ごく普通の、可もなく不可もない一般的な休日の過ごし方である。

ただいつもと違うのは、偶然スーパーで買い忘れた物があったから。
コンビニでも手に入ることだし、近場で済ませようと入ったコンビニエンスストア。
買い物ついでに雑誌棚をちらりと見れば、大衆誌の見出しに載っている好きな作家の名前が目に入った。

ちょっとだけ気になって立ち読みに興じていると、ふとどこからか異様な視線を感じた。

「……」

「…………」

外に、いる。
がっつり目が合っている。
男の顔面にじわじわと狂気的な笑みが広がってゆく。嬉しゅうてたまらんでぇと言わんばかりに例のバットで素振りをおっ始めた。しかも往来のど真ん中で。

今月二度目の危機が目前に到来していた。

考えろ。この状況を打破するために、冷静になって考えるんだ。
人間は、非常事態にその人間性が如実に表れる。
つまり、普段世間体や良心に阻まれてなし得ないような非常識であろうとも、やってのけることができるというわけだ。

少なくとも店内に入ってくる様子はないことから、俺が外に出た瞬間に襲い掛かってくる腹づもりらしい。
それならば俺も切羽詰まる必要がないので、ゆっくりと思考を巡らせることができる。

まあぐだぐた言ったところでここはただのコンビニだし、大した度胸もない俺にやれることなんてごく限られているんだけれども。

色々考えてみたところ、俺の結論はとても常識的かつ確実な抑止力の行使に落ち着いた。
俺は努めてさりげなく、コンビニ内のお手洗いを借りる。

「もしもし、警察ですか?」

この大衆誌によると、近々作家の新作発表が控えているらしい。
おまわりさんが来てくれるまで、もう少しこれを読み込んでおくとしよう。




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