唐突に意識が浮上した。
目の前で剥き出しの蛍光灯が無機質に灯っている。

しばらくぼけっとしていたけれど、じわじわと全身が痛み出してきた。
やがて骨まで轟く痛みに思わず悲鳴をあげたつもりが、出てきたのはひゅうひゅうと掠れた息遣いだけだった。
唯一動く目玉を頼りに周囲を見回す。

コンクリートの壁、一枚のドア、パイプ椅子に蛍光灯。
それ以外にはなんにもないが、ドアにはガラスの小窓がついていて、そこからこっちを覗きこむ不審な男がいた。片目の。

「………」

これは夢だ。とてつもない悪夢。

目を瞑って必死に眠ろうとする。
ひ、羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹…

「…おはようさん、名前ちゃん」

一度覚醒した脳みそはなかなか寝ついてくれず、俺の必死の努力もむなしく、薄気味悪い猫なで声を出しながらとうとう狂気の殺人鬼が入ってきてしまった。

これは夢、早く覚めろ、早く、はやくはやく。

「んん?目ぇあけた思たんやけど…気のせいやったか」

真島が遠慮がちにつんつん、と俺の頬を小さくつついた。絶対に反応してやらない。

「まぁだ寝とんのかいな、ヤワなやっちゃのう」

うるせーばか。

「男の寝顔ばっか眺めててもおもろないわ…ふあ〜ぁ、ねむ」

俺の気も知らずにでっかい欠伸をひとつかますと、そのままベッドに突っ伏して寝息をたて始めた。
鈍痛の響く腹に人の頭を乗せられると、非常に苦しいのである。

「………ふざけんな、起きろよ…痛いんだって、おい」

やっとの思いで絞り出した声は、情けなくも強張って震えていた。
真島は起きない。

「俺に、触るなって…腐れヤクザが」

起きない。
この大怪我で啖呵切っても鼻で笑われるだけだろうけれど、どうせ寝てるしもうこの際だから色々とぶちまけたってバチは当たらない…たぶん。

「……イカれてるよお前、どうかしてるって…ああもう、ほんとついてねえ…腹痛えっつか全身が痛え…」

起きない。

「慰謝料払えよなマジで…これで死んだら化けてやる、呪い殺してやる…クソ真島…」

起きない。

「ばか、あほ、まぬけ、おたんこなす、うんこ、ちんちん、あとなんか悪口あったっけ…ハゲ、デブ、おっさん、うーんと、豚野郎?」

「随分散々なこと言うてくれるやないか。誰が腐れヤクザにクソ真島や、おお?」




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