「へぇ〜、ヤクザねえ。お兄さんなんか心当たりあるんじゃないの?美人局とか、闇金とか、違法薬物とか」

「ないですよ!あるわけないじゃないですか、そんなこと!」

「でもねぇ、そう言われても、留守電だけじゃあどうにもね…もしかしたら恐喝にあたるかもしれないけど。使い捨ての番号だったら特定難しいよ」

恐ろしさのあまり必死に消去していた録音も、証拠になるかと思いその一部を残しておいたのだが、案の定というか、おまわりさんはとても渋い顔つきをしている。

警察が動くためには、不法侵入されて何か盗まれたとか、刃物持って襲われて怪我をしたとか、そういう事実が必要なのだ。

「とりあえず、おたくの家の周り、見回り強化しときますから。何かあったらまた来てください」



落胆して帰路に着く。
分かりきっていたことなのだが、改めて自分の置かれた状況をまざまざと突きつけられた。

お礼をしに行っただけなのにヤクザに因縁つけられるなんて、誰が想像できるだろうか?

けれども確かに脛を蹴り飛ばしたのはやりすぎたかもしれない、それについて謝らなかったことも。
理不尽の権化みたいな人間への接し方なんて知らない上に、あの状況で少し自棄になっていたことも悪かった。

「…やっぱり、ちゃんと謝った方が良いよなあ」

そうして無事に謝罪できたあかつきには、もう携帯は解約して、神室町には金輪際近づかないようにしよう。引っ越しも視野に入れなければならないかもしれない。

「はぁ…ん?」

憂鬱な気分で自宅アパートの手前辺りに差し掛かった時、歩道にひとりの警察官が立っているのが見えた。
さっそく手配してくれたのだろうか、それにしては、早すぎる気もするけど。
いずれにせよ、今の俺にはありがたいことだ。

少しだけ肩の荷が降りたようで、どこか心持ちも軽くなる。相談してみて良かった、本当にそう思った。
ご苦労様ですと声をかけて、家に帰ろう。


始め、警察官の顔立ちに違和感を覚えた。
何か変なものが付いてるな、珍しいというか、あるまじきというか…

次に、違和感の正体が黒い眼帯であることに気付いた。
なんだか見覚えのあるあのヤクザみたいで凄く嫌だなあ

最後に、その警察官が俺を見るなり、にたぁと嗤った。
俺の身体は瞬間冷凍されたかのように固まった。

「名前ちゃ〜ん…探したでぇ…」




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