物凄い衝撃が頬を打った。
かごから落ちた大量の缶がガラガラと耳障りな音をたて、ぼうやの固く握りしめられた拳がほんの少し赤くなっていたから、あれで殴られたのだと理解した。
「何が終わりや、ドアホ!お前より終わっとる連中なんざ、腐る程おるわ!」
「……………へぇ」
間抜けすぎる返事をして、呆然とぼうやを見上げる。
ただでさえ厳つい顔つきが地獄の閻魔さまのように歪み、二十歳過ぎの俺を殴り飛ばした小学生は、堂々たる仁王立ちで静かに怒りを放っていた。
じわじわと遅れて痛みがやってくる。
どうも口の中を切ったらしく仄かに鉄の味がして。
それでも殴った本人が俺よりもずっと痛々しい表情をしているから、文句のひとつも言えなかった。
「さっさと立てや、このアホ!」
「はい」
「なんで俺が面倒見なあかんねん…ホンマしょーもない、呆れて物も言えんわ…」
「返す言葉もございません」
ぼうやに引きずられるようにしてコンビニを出る。
とことんダメだな、小学生相手になにやってるんだろ、俺。
これ飲んで帰って寝ろ!と押し付けられた水と、半分にわけてくれたあんまんが暖かくておいしかった。
「ぼうや、」
「ぼうや呼ぶなって…龍司や。郷田龍司」
「龍司くん。ありがとうね」
「…フン」
頭痛の代わりに頬がとんでもなく痛むけれど、霞みがかっていた頭の中が晴れていくような、陰鬱な気分が吹き飛んでいくような、妙に清々しい感じ。
ここに来てようやく俺は、自分の頭で考えるということをした。
この子が怒った理由は、だめな俺にはよくわからない。捨て置かれて当然な酔っ払いを、わざわざ手間かけて面倒見てくれる理由も。
けれど、子供にここまでのことをさせてしまったからには、然るべき責任は取らなければならないだろう。
俺はアルコールで縮んだ脳みそから必死に言葉をしぼり出した。
「本当にごめんね。その…………もっと、ちゃんとするから」
なに言ってんのコイツ。アホすぎて泣きそう、死ねよ。
遠慮がちに彼の頭を撫でると、凄まじい剣幕で睨まれた。
「なんやそれ、アホらし。ちゃんとするとか、そないなこともどうでもええわ。目の前で車に突っ込んでく奴がおったら止めるやろ、それとおんなじや」
お前は、適当に酔っ払ってアホ晒してりゃそれでええねん。
龍司くんはそれだけ呟いて、最後のおまけとばかりに俺の頭にげんこつを落とすと帰っていった。
西谷誉が死んだことを知らされたのは、それから暫く経ったあとだった。
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