酒に逃げることだって、立派な自己防衛だ。
アルコールで無理やり楽しい気分になったって、嫌なことを一時的に忘れるだけだって、それでも随分救われた気持ちになるものだ。

だけど、それこそ浴びるほど飲んでも酔いがまわらないことは、ほんとうに初めてだ。

「…もうねえのかよ…」

部屋じゅうに散らばる発泡酒の空き缶をかき分けるも、未開封の缶は出てこない。
あれだけ大量に買ったというのに呆気ないものだ。

「頭いてえ」

あれからもうずっと真島くんには会っていない。
マコトちゃんにも佐川さんにも、オバチャンにだって、いや彼女にはそんなに会いたかないけど。

「買ってくるか…」

普段なら潰れるくらいの量だというのに、どういうわけだろう。ただただ頭痛が酷くなるばかりで、ちっとも楽しくならない。
酒が切れれば元も子もないような気がして、俺は致し方なく重たい腰をあげた。


「ひっどいツラしとるのお」

「…あれ、君はいつぞやのぼうや…」

「ぼうや呼ぶな言うてるやろが」

仏頂面のぼうやがコンビニで買い食いをしていた。悪ガキめ。
ワンカップやタバコを買っていようが違和感のない見た目だが、健全にもあんまんをかじっている。

「あの時は無神経なことを言ってごめんね。ほら、これで好きなジュースでも買いなさい」

「いらんわアホ。つーか酒くさっ!どんだけ飲んどるねん」

「んー…たくさん」

「は?まだ飲むつもりなんか」

「大人にはね、飲まなきゃやってられない時もあるんだよ」

納得いかないと言わんばかりに睨みつけられた。
まあ、気持ちはわからんでもない。俺も子供の頃なんか、すぐ潰れるくせに酒好きの親父をどうしようもない奴だと思っていた。

適当にかごに酒を放り込んで会計へ向かおうとすると、まるで抗議するようにぼうやが立ち塞がった。

「えっと、どうしたの?お菓子買ってあげようか」

「お前死ぬで」

「へ……」

「アホみたいに酒飲んで死んだ奴らをぎょうさん見てきた。それ以上飲んだら死ぬで」

ぼうやの目は真剣だった。まだ子供だというのに、真に迫るものを感じる。
こんな飲んだくれを心配してくれるなんて、ほんとに君は優しい子だなあ。優しすぎて、鬱陶しさすら覚えるよ。

「…別にいいんだよ。酒を楽しめなくなったら、終わりなんだから」

いつからこんな駄目なおとなになったんだろう。
俺は目の前のぼうやよりもずっと子供じみて、情けなくて、生きている価値の無い男だ。




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