「佐川さん、金髪のおっさん小学生みたことある?」

「今日も元気にアルコールまわってんねえ。肝臓逝っちゃうよ?」

いたって真面目に切り出したのに、酷い言われようである。

「見間違いなんかじゃないよ、ホントに見たんだって!」

「へ〜」

「こんなでっかくて、俺投げ飛ばされちゃったんだから!」

「そりゃ災難だったなぁ」

「もうちょっと興味もってくれない!?」

あしたば公園の屋台でたまたま知り合った佐川さんとは、時たまこうしておでんをつつく仲である。

彼はあんまりやかましいのは好まないようだが、キャバレーにも時々行くらしい。よく飲むお酒は熱燗。どんな仕事に就いているかは、なんとなくだけどわかる。
それ以外のことは殆ど知らないし、彼の口から聞かされることもない。俺からわざわざ聞くこともしない。
ひとたび知って仕舞えば、もう二度と、こうして飲んではくれなくなるんだろう。
うまく言えないが、冗談ではすまないような、彼からはそういう雰囲気が漂っている。

俺は寒空の下、好きなちくわぶをかじりながら、ふらりと現れる佐川さんととりとめのない雑談に興じるだけ。

「都市伝説かな〜、それとも妖怪?俺、もしかしてすごいもん見ちゃった?」

「うーん、都市伝説でも妖怪でもないと思うよ」

「あれ、なんで?なんか知ってるの?」

「…まぁ、心当たりならあるよ。教えてやらないけど」

「ケチ〜」

「都市伝説に、妖怪ねぇ……プッ」

くつくつと喉の奥で笑う佐川さんは、結構楽しそうだ。基本的に目が笑ってないひとだから少し珍しい。

「でもあの子、優しかったよ。水くれたし」

「ほー、へー、ふーん」

「ホントに小学生なのって聞いたら、すごく怒ったんだ。なんだか申し訳ないことしちゃったよ」

謝れるものなら謝りたいと思っていることを告げると、彼は考え込むように髭を撫でながら、湯気の立つお猪口に口をつけた。

「まぁ、別にいいんじゃない?アホな酔っ払いに絡まれた程度にしか思わないよ」

「だといいけど」

「そういうもんだって。……あっ、しまった」

突然何かを思い出したように、佐川さんが腕時計に目をやった。たちまち渋い顔つきになる。

「名前ちゃん、俺これからちょっと待ち合わせしてんのよ。今日は奢るからさ、ね?」

「え?うん、分かった」

「ありがとね。ほんと、悪いね」

今夜はもうお開きみたいだ。佐川さんは手早く会計を済ませると、あっという間に夜の闇に消えた。
次はいつ会えるのかわからないけれど、今度はおっさん小学生について問い詰めてみよう。
ちびちびと熱燗をなめながら、俺はそうひとりごちた。




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