今日も今日とて暇な俺は、酔い覚ましと癒しを求めてマコトちゃんの整体を受けようとほぐし快感へ訪れた、のであるが。

無人の受付と、それから呼び出しのベルにも応えないのでへんに思ったのだ。
だからつい、断りもなく店の奥へ入ってしまって。
店内はひどく荒らされていて、マコトちゃんも店長もいなくて、床には血の跡が点々と落ちていた。

「え…なにこれ、どういうこと?」

全くわけがわからないまま呆然と立ち尽くす。この場所で何があったのか、考えたくもない。

「…名前?」

突然発せられた声にはっとして後ろを振り返ると、驚愕したように目を見開いている真島くんが立っていた。

「あ、あれ…真島くんも、マッサージしてもらいに来たの?」

「…………………」

「なんか、俺が来たときにはこうなってたんだけど…どうしたんだろね、鍼失敗しちゃったのかな?珍しいよね、あの店長が…」

「…………………」

いつになく饒舌になるこの口と、ただ険しい顔つきで黙りこくる真島くんが、この状況の全てが嫌で堪らなかった。

「俺もたまに鍼灸してもらうんだけど、すごく効くんだよ。真島くんもお願いしてみてよ、絶対からだ楽になるからさ」

「………名前」

「な、なに」

「はよ出てけ」

「あ…え、なんで?」

「なんでもや。何も見るな。お前は知らんでええことや」

「真島くん何か知ってるの。ていうかやっぱり、警察に」

「ええから出て行け!もうこの店に関わるな!」

「ひっ」

真島くんはドスを抜いた。以前俺が、彼に見てみたいとねだったドスだ。
それが俺自身に向けられるなんて思ってもみなかったわけだけど。

彼の表情は非常に切羽詰まるものだったが、同時に今にも泣きそうであった。

真島くんがどういう事件に巻き込まれているのか、何か俺にできることは無いのか。
聞こうとはしてみたけれど、うまく声が出せなくなって、どうせ俺に出来ることなんざたかが知れてる、あいつだってそう思ってる、だから言われた通りに、大人しく見なかった振りをしよう、と、最低なことを考えた。

躊躇いなく真っ直ぐに向けられたドスが怖いから、真島くんの顔を見たくないから、俺は目を背けた。

「………ごめんね」

酒を飲むしか脳のない、なんにもできないアホでダメな俺は、逃げるようにその場を後にするしかなかったのだ。




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