兄は、兄は、どうしているのでしょう。心穏やかでしょうか、楽しくやっているのでしょうか。
それだけが、気掛かりなのです。



「おにいさま」

微笑おうとしても、無理でした。頬の筋肉すら思うように動いてくれません。
頭を撫でるその手が、骨ばって痩せて見えるのは病気の所為でしょう。
いつもよりお顔が青白いのも、きっとわたくしの病気の所為でご心労をおかけしているからに違いありません。

「おにいさま」
「…お前は、何も心配しなくていいからね。今日もまた詩集を持ってきたから。具合がよいときに読みなさい」

微睡むわたくしに、兄はどこまでも優しい声色で諭すのでした。それがどうしようもなく寂しいのでした。



眠る妹の、かさつく肌はおよそ年頃の娘とは思えない。長い睫毛のつくる影が震えて苦しそうに息をする。
状況は一向に良くならない。あとはもう死ぬるのみだと言う医者に頭を下げて貰う薬が、どれほど効くのだろう。
この娘が幸いであれと願うことは俺の独善なのだろうか。この苦しいだけの世界で、こんなにもか弱いこの娘が幸福であり続けることがどれほど大変か、俺は思い知ってしまったのだ。
せめて、せめて、俺のように穢れることなく聖いままであって欲しいと、そればかり願ってゐる。




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