しとしとと雨が降っていた。
妻である女は俺の妹のことなどどうでもよいようだった。あの娘の名前すら覚えようとはしなかった。
落椿が目に痛いほど紅かった。
付き合いの長い煉獄は、あの娘を本当の妹のように良くしてくれた。しかしそれは、俺が奴の本質を見誤っていただけの紛い物であった。
血の匂いがした。
俺たちの両親は、あの娘の病を、不幸を、短すぎる生を嘆いてばかりだった。
泣き言であの娘を誹り、かりそめの平穏すら与えてくれなかった。
「わたくしは、ひとりでゆきますから」
ある時あの娘はこう言った。
俺がもう死んでしまいたいことを見透かしているようで、妹にそんな気遣いをさせてしまう己が情けなくて、いや、それでも俺はともに死にたかった。
雪のように白いから雪子。生まれたとき雪が降っていたから雪子。健気で優しい雪子。こんな俺を兄と呼び慕ってくれた雪子。
俺はお前だけが、生き甲斐だったのだ。
雪子は、長年にわたりからだを蝕み続けた病ではなく、鬼によって食い殺されていた。
明け方の薄暗い室内で、窓辺にはうっすらと雪が積もっていた。外では既に、雨が雪に変わっているようだった。
道理で寒いわけだ。
雪子の頬に散った血がとても美しかった。
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