・名前変換なし


三久保神社からほど近く、のんだくれ通りの一角にその店は軒先を構えていた。
小汚い居酒屋が狭苦しくひしめき合う中、唐突に、前触れなく、ぽつんと紫色の提灯の灯りが鼻っ面に現れる。
雨風に晒されすっかり文字も読み取れなくなった暖簾をくぐると、これまた狭っくるしく埃っぽい店内の奥から、いかにも胡散臭そうな男が煙管をくゆらせ胡乱げに視線だけを向けるのであった。
薄暗い天井までうず高く積み上げられた古書や、一体何に使うのか知りたくもないような骨董品が乱雑に置かれて、店内を歩くことすらままならない。
本人曰く何が何処にあるのか全て把握しているだの宣うくせ、客の欲しがる商品は自力で探し当てなければならないのであるから、KKは毎度この店を訪れるのが億劫で仕方がなかった。
凛子もエドも、この店を訪れることに関しては常に消極的なほどだ。

「よう。頼んでたやつ、あるか」

わざとらしく咳払いをしてから声をかけるも、先ほどから手元の書き物に目を落としたっきり顔をあげるそぶりもない。
ため息をついて仕方なく物色を始めると、気付かず蹴り飛ばした達磨が積みあがった陶磁器の山に突っ込み派手な音をあげ、飛び上がった拍子に吊り下がっていた何かの脚のような干物に顔面を強かに打ちのめされた。

「………悪い」

ばつが悪そうに後頭部をかくKKを無言のまま睨みつけてから顎をしゃくって示した先には、紐で雑に括られた御札が放り投げられていた。

なぜわざわざこんな店に自ずから足を運ぶのかというと、御札や数珠といった怪異退治に欠かせぬ必需品が、ここでしか手に入らないからだ。
どうやってこれらを取り寄せているのか、この男がそれを生業にしている理由も、KK達に助力するわけも、そもそも何者なのかも…本当に人間なのかすら、すべて不明瞭である。
はっきりしているのは、こいつがとんでもなく無愛想で無気力な男だという、ただそれだけ。

もはや愚痴る気力すら湧かず御札をポケットに突っ込み、出口へ足を向けるとようやく男が口を開いた。

「金」
「…凛子から渡されてねえのかよ」
「弁償代」
「あー……クソ…」

己のしでかした過ちを盛大に呪いながら、KKはくしゃくしゃの札をいく枚か文机に叩きつけた。
男は眉ひとつぴくりとも動かさない。

「KK」
「足りねえかよ!?」
「また来い」

拍子抜けしたようにぽかんと口を開けるKKを見て、男は薄く微笑んだ。




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