TOP > 更新履歴 > 記事 巽のカフェ店主パロ 2025/11/04 20:30 「あ、閉店ですよね。すみません長居しちゃって……」 コーヒー2杯とケーキで随分と長居してしまった事を反省しながら、お会計の為にと私は席を立った。入店した時はぽかぽかと暖かい日差しが店のあちこちに溢れていたというのに、今やすっかりひんやりとし た空気がかわいい縁取りの窓を冷やし、店の温かい空気との温度差で白く曇り始めていた。 「あぁいえ、こちらこそすっかり話し込んでしまい申し訳ありません。あなたのお時間をだいぶ頂いてしまいましたな」 店主の巽さんは穏やかに笑ってお会計をしてくれた。払った金額以上に楽しい時間をもらったので、私はなんとなく申し訳ない気持ちになる。 巽さんの柔らかい声で聞ける気さくな話が面白くて、この空気感がすっかりお気に入りの私からしたらここで過ごす時間なんていくらあっても足りないくらいだ。さすがに仕事があるからそこまで頻繁には来れないけれど、こうした連休の初日にはついつい長居したくなってしまう。 「夕飯、どうしようかな」 なんとなく会話をまだ重ねたくてそう呟くと、巽さんが一度口を開き、躊躇うように黙ろうとしたけれど一度何かを決心したように一人頷き、私を見た。綺麗なすみれ色の瞳が、少しだけ不安げに私を見る。 「あの、ご迷惑でなければ、ですが……」 「は、はい」 何を言われるのが全く予想が付かない中、私は緊張しながら返事をした。巽さんは少し目線を下げながら、いつもの穏やかな笑顔ではなく不安そうな表情をする。私はゆっくり瞬きしてから、彼の言葉を待った。 「実はこの店、店休日の前日は夜も営業しておりまして……これからバーになるんです。軽食やお酒をお出し出来ますので、お夕食がまだ決まっていないのでしたら、ここで食べて行かれませんか?」 「えっ、そ、そうなんですか?」 「ご都合が悪ければ構いません。ですがカクテルとおつまみ一品ずつサービスしますので、その、いかがですかな?」 「い、いいんですか?」 「俺からお誘いしているのに全て奢りますと言えないのが情けない話ですが、もしご都合が合うのでしたら、ぜひ。まだ、あなたと話がしたいです」 そんな風に言われて帰れるほど、私は無神経ではない。一つ頷いて「嬉しい。お酒好きなんです」と言えば、巽さんの表情がパッと明るくなった。綺麗な顔が一気に周囲を明るくするように華やぐ。 純粋に可愛いなぁ。などと思ってしまった。 [prev][next] [Back] |