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真緒が風邪を引く・続編
2025/11/04 20:43

「もういいよな?」
「……」
「……な?」
「……」
「だ、だめか?」

 この間、共演した女優とのキスシーンの際に移された風邪を見事治した真緒くんは私に看病されている時、熱に浮かされながら言った欲望丸出しの言葉をそっくりそのまま覚えていたようだ。風邪が治った数日後、彼は忙しいはずなのに何故か強引に時間を作って私の家に来て、夕飯もそこそこに人の肩を鷲掴む勢いで迫っているのが今である。

 そう、彼が熱を出した時に言った言葉というのはつまるところキスのおねだりである。綺麗でかわいい女優とよりも彼女である私としたいと言ってくれるのは正直嬉しいが、真緒くんはわりとこういう事に関してムッツリ気味なのにどこか前のめりで、ついでにあまり余裕が無い。それが可愛く見える事もあるが、今回に至っては余裕がなさすぎて驚き半分、呆れ半分と言った所だ。

「だめではない、けど……」
「け、けど?」

 ムードもへったくれもない。別にキスする度にムードを作って欲しいとかそんなハードルの高い要求をするつもりはないけれど、真緒くんの今の表情は爽やか路線のアイドルがしていい顔ではない事は確かである。

 私は先程まで二人向かい合って座っていた姿勢がいつのまにか真緒くんに肩を押されて押し倒され、両脚の間に彼の膝が入っている状態なのをチラと見た。さりげなく色んなものを確認する。まだ臨戦体制ではないのは救いだろうかなんてそこそこ下品な事を考えつつ、しばらく黙り込んでいる私に何かを感じ取った真緒くんが小さな声で私を呼んだ。

「やっぱ、いきなりすぎたか?嫌なら……」
「嫌じゃない嫌じゃない。むしろ求めてくれるのは嬉しい…ょっ、」

 本音を真正面から言い切らぬうちに、先ほどまでなんとか許可を取ろうと耐えていた彼の理性はあっという間にどこかへ飛んで行った。角度を変えて、唇同士をぴったり合わせて食むようなキスを何度かした後、真緒くんがゆっくり顔を上げた。

 キスのせいか他の事情か既に少し呼吸が整わない彼と、情けなくも心臓がバクバクと鳴り響いているせいで呼吸が荒い私の音なき音がひたすら重なり合うのが恥ずかしくて首を捻って顔を背けたら、何のスイッチを入れてしまったのか再び頬をガッツリ支えられてより深く唇が重なる。やがてねだるように舌先が触れたので、そこからは私も余裕なんてない。彼の背中を掴みながら色んな感情に押し流されていると、ほぼ無意識の領域で自分の体が小さく反応した。

「……おっぱい、触るのは聞いてない……」
「だ、だめだった?」

 そうやって言えばなんでも許すと思っているのだろうか?彼の瞳を憎らしげに見つめたら、思った以上に甘えたな、熱く濡れた瞳をしていた。
 もういいや。別に、焦らすほどのものでもないし。



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