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ジュンの秘密を見る
2025/11/04 21:16

 久しぶりの家デートの内容は、これ以上ないくらい平穏であるはずだった。

「ねぇジュンくんちょっとタブレット貸して」
「いいっすよぉ。オレ、コーヒーのお代わり淹れてきます」
「ありがとう」

 特に何の予定もなく、ジュンくんの家で二人でのんびりする事を決めた日に私はちょっと気になっている動画を調べようと彼のタブレットを手にした。パスワードはもう知ってるのでスイスイ指を滑らせて開錠し、動画アプリを開くべくアイコンを押そうとした所で、つい現在開いているアプリの一覧を見てしまったのが事の発端である。

「おっと……あれ?」

 そこに見慣れないアプリを開いた跡があり、私はすぐに閉じようとスワイプしたはいいもののうっかりそのアプリをタップしてしまい、一瞬硬直する。
 さすがにわかる。それはAV視聴アプリだった。無料の動画アプリではなく、ちゃんと購入して見るやつだ。

「……」

 ジュンくんだって健全な男の子なので、もちろんAVは見ているだろうとは思っていた。なんなら結構好きな方だろうなとさえ勘繰っていたし、それに対してはお好きにどうぞと思っている。だって私以外の女の裸を見ないで!と言えるほど私だって自分に自信なんか無いし、流石に傲慢だと思うからだ。

 私はタブレットにイヤホンを挿して音が漏れないようにすると、アプリ内のマイページボタンを押した。完全なる好奇心であり、下心でもある。ジュンくんは一体どんなものをオカズにしているのか純粋に気になり、なんなら少し興奮していた。表向きは爽やかアイドルのジュンくんがAVで自慰する事もあるのかと思うと、何故か私がムラムラする。

 購入済みのボタンを見つけ、一度キッチンの方に目を向けてから彼がまだ帰ってこない事をチェックすると視聴履歴を見た。

 AV女優に偏りはないけれど、ジャンルは意外と新婚モノとか恋人モノとかのラブラブ系が多そうである。

「えっ、かわいいじゃん……」

 SMものとか人妻ものとかあったらどうしようと思ったけれど、AVの中では案外健全なものが多い気がする。こんな所まで爽やかなのかと少し感心してると、つい3日前に複数購入した作品があったので題名を見て、私は思わずパチパチと数度瞬きをした。

『ご主人様におねだりご奉仕!色白UR級美人メイドの深夜のオシゴト』
『朝起きたら隣に見知らぬ猫耳娘…止まらない発情期は俺が鎮めてやる』
「……」

 メイド服と猫コスプレの作品だった。概要の欄を開くと、一応のストーリーが書いてある。

 要は女の子の方が上に跨ってグイグイ行く系の内容で、最後は快楽堕ち的なアレだ。ジュンくんは実は結構攻められたい人なのかと私は冷や汗が伝う背中の感触をリアルに感じていた。え、私今後はもっと頑張った方がいい?

「お待たせしま……あ!ああ〜〜!!なっ、なっ!何見てるんですか!!」

 放心のあまりジュンくんがコーヒーを淹れて戻ってきたのにも気づかなかった私は、彼にタブレットを引ったくられてから自分の失態に気づく。案の定、顔は真っ赤で泣きそうになっているジュンくんと目が合った。

「ちょ、も、なんで、」
「ご、ごめんね。アプリが開いたまんまで……」

 そう言い訳すると、ジュンくんはヘナヘナとしゃがみこんだ。本気で凹んでいるようである。私は彼に近づき、思わず頭をよしよしと撫でた。おぉ可哀想にともはや他人事である。

「マジ、ちょっと勘弁してくださいよぉ〜……」
「見ちゃってごめんね」
「いや、その、引いてないんですか?」
「引かないよ。全然」

 そう言ってからぎゅっと彼の頭を抱き寄せる。そうするとジュンくんが、弱々しく抱きしめ返してきた。泣きたい気持ちをどうにか振り切ろうとしているのだろう。好奇心が勝ってしまった事を、私は純粋に反省した。

「すみません、浮気のつもりはないんです。絶対に」
「えっ、当たり前だよ。浮気の内にも入らないでしょ。これからも買って見ていいんだからね」
「……彼女に許されるのも、なんか複雑ですね」
「いいのいいの。よしよし」

 私が悪いのに何故か慰める立場になりながらジュンくんの頭をまた撫でれば、ジュンくんが小さな声で「あんたの、その、あんたが一番好きっていうか、比べるものでもないし」とモゾモゾ言ってるので、私はつい揶揄ってやりたくなってジュンくんの耳元で囁いた。

「猫耳とメイド服、私もやろっか?」

 多分気まずさと恥ずかしさと、それから興奮で顔を上げたジュンくんに、私はうっかりゾクゾクしてしまうのだった。
 ジュンくんがちょっとえっちな女の子が好きなのを、私は嫌ってほど知っている。



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