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巽と酔っ払う
2024/08/25 23:28

 擬音語にすると、ぼわ〜ん。だろうか。

 たまには思い切り家で飲もうという事になり広げた缶ビール、缶チューハイにワイン。意外というか見た目通りというか渋好みな巽くんは焼酎を空けながらだらだらとTVを流し見する、ある意味世界がここだけ隔離されたような空間に私は舞い上がっていた。なにせ少し照れ臭いくらい久しぶりに会えたのだ。お酒の力を借りてもなんら不思議ではない。

「今日はペースが早くありませんか?大丈夫ですか?」
「え、だいじょうぶだよ〜。巽くんだって焼酎全部空けたくせに!」
「え?はは、本当だ。空っぽですな」

 そういえば巽くんはザルだった。別に彼に負けじと缶を傾けていたわけではないが、テーブルを見ると空き缶がいつも以上にバラバラとしている。今日はいいのだ。そういう日なのだから。

 そこでふと、隣に座る巽くんの太ももに目が行った。部屋着のズボンの上からもわかる筋肉に思わず手が伸びる。膝はダメだから、それよりもう少し上。と言い訳をしながらべたりと彼の太ももに手を乗せ、揉むように指を動かす。

「、わ。なんですかいきなり」
「え、弾力すご」

 自分の太ももに手を当て、同じく揉むように指を動かすと指が埋まるのに対して、巽くんの太ももはそれを弾くようにパッツパツだった。
 ここでアルコールの悪いところが出た。テンションが上がってしまったのだ。

「すご、筋肉すごーい!パッツパツじゃん!」
「鍛えてますから」
「他は〜?見たい見た〜い!」
「えっ、ちょっと、まってくだ、あぁ、」

 私は巽くんの上にのしかかるように覆い被さり押し倒すと、大人しく床に崩れるようにして寝そべった巽くんに跨り、わきわきと指を動かした。

「まずは腹筋!腹筋くださ〜い!」

 Tシャツを勝手にたくし上げ、線の入る腹筋をペタペタと両手で触る。顔のいい男はへその形までいいのか。などとアルコールに浸った脳が考えながら、少し汗ばむ両手でベターっと腹筋を触った。

「ひゃあ〜固い!かっこいい〜!」
「こらこら、酔っ払いさん」
「は〜い!」

 呼ばれたので楽しげに手を上げる。巽くんの呆れた顔が見えたけれど私は彼との関係性に甘えて手を止める事なく、脇腹にもそっと指を滑らせた。しっかりとした体幹に、思わずドキドキとしてくる。

「あ、ここにもほくろみっけ」
「くすぐったいです」

 そう言って手を掴まれる。そこで彼が脇腹に弱い事を思い出したけれど、やんわりと止めてくるだけで強い抵抗をしない彼に甘える事にした。指でつまもうにもつまめない脇腹をツンツン突いていると、急に巽くんの手が私の脇腹を撫でた。

「ひっ!」
「ははは、あなたも脇腹弱いんでしたな」

 彼とは違いつまめる脇腹を持つ私に手を伸ばして、そのまま巽くんが手のひらを押し付けるように撫でてくる。なんだかよろしくない空気になりそうな予感をへろへろな頭で察知した私は、そろそろ彼の上からどこうとお尻を浮かせた。

「ぎゃ!」

 それが悪かった。巽くんの手が伸びやすい位置に、お尻を移動させてしまっただけなのである。

「さて、」
「ひ、ひぇ、やめて」

 まだ私の下にいる、全然酔っていない酔っ払いがにこりと微笑んだ。

「次は俺の番ですな」

 酔いが覚めるのは一瞬だったけれど、身体が動くようになるのはとっぷりと真夜中になってからなのである。


「酔ってないくせに!酔ってないくせに!」
「酔っ払ってますよ。試しに呼んでみてください」
「よ、酔っ払いさ〜〜ん」
「はい」
「嘘つき〜!」

 次の日の朝起きて声がガラガラなのは、何も酒のせいだけではない。



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