TOP > 更新履歴 > 記事 俺零と飲酒/成人パロ 2024/10/27 23:11 「おいしい?それ」 お風呂から上がった私の声に顔を上げた零くんは、随分とかわいい色の缶を手にしていた。この前買っておいたアルコール度数3%の缶チューハイを片手におつまみはないのか、テーブルの上には彼のスマホしかない。ソファに長い脚を組んで座り、さもその部屋の主とでも言わんばかりの出立ちは私の住むちっぽけな賃貸住宅なんておよそ似合わない。彼の周囲数cmだけタワーマンションの最上階にいそうな雰囲気である。 「おぉ。あまり酒っぽくなくてうまい」 「寝る前だしちょうどいいかもね」 髪を拭きながら零くんの隣に座って、彼の飲んでいた缶チューハイを取って呷った。微かにアルコールが抜ける香りと、昔飲んだことのある乳酸菌飲料の味がする。 「あまっ」 「あめぇだろ」 私からまた缶を奪い、零くんがそれを飲んだ。それにしても缶チューハイが似合わない人である。私はしみじみと呟いた。 「零くんて毎日お高いグラスに赤ワインつつつーと注いで飲んでますみたいなビジュアルなのに、缶チューハイ飲んでると急に親近感湧くね」 「そうか?俺だってチープな缶チューハイくらい飲む」 そう言って再び豪快に缶を呷る零くんの無防備な喉仏が私の眼前に晒された。ただ首元にある突起なのに、どうしてこれだけ色っぽく見えるのか不思議で仕方ない。 なんとなく甘えたくなってわざと彼に寄りかかると、何も言わずに空いた片手で抱き寄せてくれるのはずるい。それを狙って甘えたにも関わらず、一口しか飲んでいないチューハイが体内で沸騰して、蒸発して濃度の高いアルコールとして残り私の体を侵食していくような気分になった。 「なんだ、どうした?珍しいじゃね〜かよ」 よしよし。と頬を撫でてくる少し冷たい手がお風呂上がりの火照る身体に心地よくて目を閉じると、不意に彼の飲む甘い缶チューハイの匂いがふわりとした。 「ねぇそれ、甘い?」 思わず蕩けた声で聞く。零くんは答えない。どんな味?と更に聞けば彼は「さぁな」とはぐらかす。それでも私はなおも同じ質問を繰り返した。 「ねぇねぇ、」 「……さっき飲んだだろ」 私の甘えの真意に気づいている彼は、わざとそっけない風に答えてくる。それはお預けする事で焦らしている楽しさもあるけれど、彼の優しさによるものだ。 「だめだ」 零くんは私から思い切り顔を背けた。一度背けてから、それでもチラリと私の寝巻きの隙間から見える首筋を見る。 まだ傷が塞がらない首筋の深々とした噛み跡は、彼が昨晩つけたものだ。 彼の、セックスの最中どうしても抜けない癖。それは私に傷を付けたがるのことだった。キスマークのような甘いものでも、可愛い程度の噛み跡でもない。彼は私の骨を砕かん勢いで、皮膚を突き破らん勢いで噛んでしまうのである。 それを後悔してはまた私の首筋に、肩に、身体に噛み付いてくる。そしてその後、私よりも泣きそうな顔でこちらを見てから謝ってくるのだ。 すまなかった。もうしない。だから離れないでくれ。 そう言って項垂れては、また湧き出る性欲に抗えない零くんが私はとても愛おしい。 愛おしすぎて食べてしまいたい。そんな思いを隠しきれずに露呈させてしまう彼の弱さに、吸血鬼のような獰猛さに私はもう、とっくに溺れきっている。 「私はしたいよ」 「やめろ。俺は嫌だ。傷つけたくねぇ」 「……じゃあ寝るね。おやすみ」 ソファから立ち上がり、背中を向ける。刹那、強い力で手を引かれ、強気そうな彼の鋭い瞳が一瞬だけ、捕食者のように怯えた。 「……いいよ。噛んでいい。ただ、昨日と同じところはやめてね」 そう言うと、彼は空き缶をテーブルに乱暴に置いて、私の手を引いた。 そうかもしれない。捕食者は彼で、彼を食らって喜んでいるのは、私の方なのかもしれない。 [prev][next] [Back] |