煉獄さんは忙しい人だ。柱であるなら当然らしいけれど、本当に四六時中任務に追われ、休む日なんてあるのかと思うくらい。
そもそも柱なんて滅多に会えないとアオイさんに言われたし、前隊士のお世話をしている時は、柱怖いとみんな口を揃えて言っていたし。
そんなことないんだけどなぁ。長期任務の彼のことを思う。いつ頃帰って来れるのだろうか。本当に毎日毎日彼の身を案じるばかりだ。いつ命を落とすのかも分からない。
「名前さん?手が止まっていますよ」
通りすがりのしのぶさんが「どうかしました?」と洗濯中の私を見て問いかける。
「す、すみません...」
「何か悩み事でもある顔をしていますね」
しのぶさんは何でもお見通しらしい。確かに頼りになるし、気兼ねなく相談出来る人だ。
「...その、やっぱり心配というか、いや、柱と仰っていたので、凄くお強くて心配される筋合いはないと思われるんですが、あの、えっと、」
「ふふ、そうですね。確かに煉獄さんはとても真面目で頼りになる方ですが、身を案じてあげるのはいい事だと思いますよ」
「...はい」
「会いたいのですね、煉獄さんに」
「えっ...?!」
「...ふふ」
会いたい、会いたいのだろうか。確かに煉獄さんの顔を見るだけですごく安心するし、嬉しい。...嬉しい。顔が熱くなる私を見て楽しそうにクスクスと笑うしのぶさん。
「では、文なんか書いてはいかがでしょうか」
「文...ですか?」
「はい。私たち鬼殺隊の隊士には鎹鴉という伝達手段がありますので、文通もこの子たちが届けてくれます」
すごい。そうなんだ。とても賢い鴉だなぁ。
「で、でも任務中にご迷惑ではないでしょうか...そんな私なんかの文を読む暇もないかもしれないですし...」
「煉獄さんならきっと喜んでくれますよ。返事も必ず来ると思います」
そうだろうか。あまり自信もないけれど、しのぶさんが笑って背中を押してくれたので、緊張しながらも筆をとった。何を書こう。なにも思っていなかったけれど、ただ、彼の身を案じて、それから帰りを待っていると言うことだけ。伝えたいことも、聞きたいこともたくさんあるけれど、ただそれだけを文にしたためた。
それから2日ほど経った。やっぱり迷惑だっただろうかと思うことが大きくなって、嫌がってもう私と会ってくれなくなったらどうしようとさえ考える始末で仕事にも専念できなくなってしまう。すると洗濯中の中庭に黒い鴉が私の前の棒に止まる。口には丸まった紙を加えて嘴で私の手に置いた。
「キョウジュロウカラノフミダ!キョウジュロウカラ名前二ワタス!タノマレタ!」
「!?しゃ、喋った...」
片言で喋った鴉にびっくりしたけれど、キョウジュロウという名前に胸が高鳴る。煉獄さんから、返事が来た...。
震える手で紙を開く。迷惑だって言われたらどうしよう。そんなのもう立ち直れない。
達筆な文字が見えた。綺麗な字だ。
そこには、返事が遅くなってすまない。という謝罪から始まり、今は浅草から外れた山奥の村にいること。怪我もなくもうすぐ任務が終わって帰れること。最後に、手紙ありがとう。と書いてあって、読み終える時には目から涙が零れて文字を滲ませてしまった。嬉しい。どうしようもなく嬉しい。よかった。本当によかった。
「ヘンジ!アルナラトドケルゾ!」
「...あっ、はい...!お願いします」
泣いてる場合じゃなかった。急いで、帰りもお気を付けてと返事を書いて鎹鴉さんに託す。すぐさま青い空へ飛び立っていった。
仕事に専念しよう。こんなにも、帰りが楽しみになるなんて。