いい洗濯日和だった。
シーツやタオルを干していると、ガラリと後ろの扉が開いたので振り返った。待ちに待っていた煉獄さんが居たのだ。
「煉獄さん...!おかえりなさい」
洗濯用のカゴを持って駆け寄るのだが、固まってしまったのだ。目を見開いて、じっと見つめる煉獄さん。どうしよう。どうしたのだろうか。
「...煉獄さん?」
「あ、あぁ、すまない。...今日は髪を結っているのだな」
「え?はい。お仕事するのに少し邪魔になってしまうので」
風も吹く外では揺れる髪が邪魔になってしまうので今日は髪を緩く横に一つ結びしているのだが、何かおかしかっただろうか。
「すみません...おかしいですかね」
「む、いや!いいと思う!とても似合っている!」
突然大きな声でそういうので驚いたけれど、煉獄さんに言われると、不思議なことに真に受けて照れてしまう。
「あ、ありがとうございます...」
少し頬を染めて俯くと、頭に手が置かれた。
上を見れば、優しい顔で笑っているものだから、胸が高鳴る。熱い。顔も。心も。
どうしよう。どうしよう。
「あぁ、そうだ」
「...?」
「君からの手紙とても嬉しかった」
「ほ、本当に...?ご迷惑に、なりませんでしたか...?」
「そんなことはないぞ!ありがとう!」
ぎゅっと胸の前に手を握りしめる。こんなにも優しい顔をされたら、落ちないわけないじゃないか。ううん、違う。きっと分かっていた。初めて会ったあの時から。好きだ。どうしようもなく。煉獄さんが好きだ。
「今日はいい洗濯日和だな」
「...はい。とても」
「仕事も順調そうで感心感心!胡蝶も君のことをよく褒めていたぞ」
「そんな、私は、煉獄さんの方がとてもすごいと思います。いつも、たくさんの方に慕われていて、頼りにされて、強くて、優しくて」
思わず口走った言葉に頭に乗っていた手が止まって、煉獄さんが目を丸くしたのが分かった。恥ずかしい。
「ありがとう」
だから、少しだけ、寂しいなんて思ってしまうのだ。彼は誰からも必要とされる人。私なんかよりも遠い世界にいる人。
「では、俺はお館様のところへ行かねばならないから」
「...あ、...はい」
そうだ。私とこうして話しているだけでも貴重なんだ。彼は歩みを止めることは無い。次はいつ会えるのだろうか。またすぐ任務に行くはずだ。どこへ行くのか、いつ帰って来れるのか。
そう思えば無意識に手が彼の右手の隊服を掴んでいた。私も一歩ずつ踏み出して行きたい。
「ま、また...文を書いてもいいでしょうか」
震える手と声で伝えた。洗濯物が風に揺られて木の葉も宙に舞った瞬間、彼の耳にも届いたらしい。
振り向いて、彼は目を細めた。
「あぁ。楽しみに待っている。必ず返事は届けよう」
笑顔を向けてくれた瞬間、こんなにも景色が鮮やかになるのだ。どれだけ私の心に響くのか、彼はきっと知らないだろうけれど、この気持ちを大切に育てていきたい。彼が唯一無二にくれた恋の気持ち。今日もこれから先もずっと。