星の見えない夜でもいいよ。

白い紙の中で達筆な文字をなぞる。
たったこれだけのことで舞い上がってしまうのだから恋と言うのは恐ろしい。

今日は人里離れた山奥にいる。
藤の家で休息をとっている。
ご飯はさつまいものご飯だった。
星が綺麗だった。


些細なこと。それだけでも何度も送り合う文通に嬉しくてたまらない。
思わずにやけてしまう口元を手で覆うけど、聞こえた声の主は見えていたようだった。


「嬉しそうですね」

クスクスと笑うしのぶさん。


「す、すみません...お仕事に戻ります」
「いいんですよ。名前さんは最近よく働いてくれてますから」
「恐縮です...」
「ふふ、煉獄さん。ちゃんとお返事返してくれてるようでよかったですね」
「私なんかの文に、丁寧に返してくれて...」
「あなたの文だからですよ」
「え...?」

そう意味深なことを言って間抜けな声が出るけどそれからはしのぶさんはまた楽しそうに笑っていた。

「あ、そうです。名前さんに頼みたいことがありまして、この薬を煉獄家に持って行ってほしいのです」
「れ、煉獄家...?ですか...?」
「はい。煉獄さんに頼まれて処方したものが完成したので」


よろしくお願いしますね。と笑顔で持たされて断れることもなかった。





・・・


「こんにちは...どなたかいらっしゃいませんか...」


大きな屋敷の扉を叩いて声を出す。しばらくして小さな男の子が扉開けた。


「ど、どなたでしょうか...」


似ている。あの人に。
彼ほど意思の強い目付きではないけれど、大きな瞳と綺麗な髪の毛がそっくりだ。

「...あの...?」
「突然ごめんなさい。私、蝶屋敷でお世話になってる名前と言います。胡蝶しのぶさんに頼まれて薬を届けに来ました」
「あ、ありがとうございます。お預かりします」


薬を手渡ししてニコリと微笑むと、少し頬を染めて照れくさそうに眉を下げる。
可愛らしい。自分の弟もこれくらいの歳だったなぁ。これからもっともっと成長して大きくなって行くはずだった弟だ。きっと煉獄さんにとっても大切で愛おしい存在のはず。私も、大切な人を守れるくらい強くなりたい。
無意識に手が彼の頭を撫でていた。驚いたように目を丸くしたけれど、嫌がる様子もなく、寧ろさらに頬を赤くして視線をさ迷わせていた。


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